〈※本記事は、2015年4月にフィールドに訪れた際のアーカイブレポートになります〉
「世界最高峰」この言葉は様々なシーンで表現されますが、伝統のある物語を感じさせてくれます。地球上で最も宇宙に近い世界最高峰から見上げた空、見下ろした地平線はどんな光景でしょう。ローツェ峰から眺めた世界最高峰は、どんな山容なのでしょうか。想像が山のように膨らんでゆきます。
標高が高くなると、村の造りも変わってきます。建物、塀、柵などが石造です。その土地で採掘された石材、風景と見事に調和して村全体が芸術作品のよう。
作品の材料はこれらの岩石たち。これをパズルのように美しく積み上げてゆき建造します。
荷物を運び上げる方々のために、柵にひと工夫されてベンチまで造られています。石材を組み合わせているだけですので、改装や保守も簡単です。その細いスタイルから、なぜそのような強力なパワーを長時間出し続けられるのでしょうか、短い休息時も荷物を整える程度で、さくっと再び出発されてゆきます。
その土地で掘られた岩石での建物。その斜面に溶け込み過ぎている光景に感動してしまいます。なぜ、ここに造る必要があったのでしょうか、高所順応を目的としたエベレスト街道歩きですが、いろいろ考えさせてくれます。気持ちまで少しずつ何かに順応してゆくような感覚になります。
見慣れた無人売店とも、そろそろお別れです。この気温から、何を注文しても冷たく美味しく飲めそうです。
標高が上がれば、日差しも強くなります。その強烈な太陽光で、お湯を沸かすだけでなく、調理までされています。地球にやさしい最も環境に配慮した最先端の台所を、山奥であるエベレスト峰の麓で見つけました。
これから始まる危険な登山の安全祈願をお坊さんにお願いします。
唄を詠むような、お坊さんの声に気持ちが凛と澄んでゆくようです。
その安全祈願によって登頂された、エベレスト・サミッターとなった方々から感謝の便りが届いたのでしょう、夢が叶った瞬間の素敵な表情が壁一面に貼られています。写真一枚一枚の笑顔から、そこに到るまでのドラマを想像します。
雲を見上げるような峰々、朝日を受けて神々しさが増します。これから向かうエベレスト峰の山頂は、これらの峰より数段高いことが信じられません。
数日間、ほぼ水平のような街道を歩き続けたからでしょう、緩い坂道でも息が苦しくなります。
圧巻の一言、いつまで眺めていても飽きません . . . 。
気圧の低い標高の高さの影響だからでしょうか、すぐ頭上をヘリが場違いな爆音を響きかせながら飛んでゆきます。機体の姿が小さく消えてゆく、その方向にエベレスト峰BC(ベースキャンプ)があります。
風にたなびくタルチョの光景、この数日間で何回見上げたことでしょう . . . 。タルチョをなびかせている谷から吹き上がる風も、氷で冷やされたような空風に変わっています。いよいよ水平移動の散策から垂直移動への登山が始まります。体調も順調です。タルチョは、風になびくたびに読経されているといわれています。最初は物珍しさの観光客気分で眺めていましたが、風でたなびく音(読経)を耳を澄ませて感じます。その神妙さから標高8,000mの世界に入る登山者に変わったことを、五色のタルチョが伝えてくれます。