南緯32度、日本との時差12時間。日本列島の裏側、地球儀をぐるりと半周回した場所、世界最長8,000kmアンデス山脈の旅へ。日本の地平線の下、南半球の星空(宇宙)を眺めながら、南米大陸最高峰アコンカグア峰(6,960m)山頂を目指します。
南米大陸最高峰・アコンカグア峰(6,960m)登山 vol.1は こちら
ピエドラ・ヌメラダ(3,354m)のキャンプ地に到着。夕日で赤く染まったエル・プロモ峰が正面に見えます。テントのすぐ横には澄んだ池があり、水面に映る”逆さエル・プロモ”を、シュラフに入りながら楽しみます。
冬休み時期の博物館は、繁忙期。数日前まで、プラネタリウムで「冬の星座解説」の仕事に慌ただしく追われていたことが信じられません。3週間もの長期休暇をいただいて、天文研究室の仲間たちに申し訳ない気持ちが、アンデス山脈に入山しても残ります。登山が好きな博物館長からは応援されながら見送られ、後輩からはたくさんの餞別までいただきました。テントで何もしない時間を過ごしていると、感謝という気持ちが”逆さエル・プロモ”を眺めながら膨らみます。
風を感じませんが、麓から濃い霧がこちらに向かってきます。滑昇霧と呼ぶのでしょうか。山肌に沿って、歩いてきたルートを包み隠すように谷霧が広がります。
夕映えの時間帯に濃い谷霧に包まれました。キャンプ地の空間全体が、茜色に染まります。色彩に詳しい方でしたら谷霧の濃淡と夕映えの強弱で刻々と変化する、この色相を明度や彩度で上手に表現できるのでしょうが、メンバー同士「赤い色がどんどん変わって、きれいだね」と話しながら、その変化してゆく光景を楽しみます。
夕焼けの光が谷霧に乱反射して、とても素敵な世界になりました。他の登山チームも、この神秘的な風景を楽しんでいる様子、その表情、リアクションは世界共通です。
太陽が沈みかけたタイミングと谷霧の発生が重なり、美しい光景を見せてくれました。太陽が沈むとエル・プロモ峰も、赤、紫、青の微妙な色合いを溶かし合いながら神秘的に暗くなってゆきます。