人類初の宇宙飛行を成し遂げた国・ロシア連邦。ヨーロッパ大陸最高峰であるエルブルース峰はその国にあります。ユーリイ・ガガーリン飛行士が宇宙から伝えた有名な言葉より、宇宙船ボストーク1号が発射された際に彼がつぶやいた「さあ、行こう!」という言葉が好きです。これから未知の世界に向かう気持ちが短い交信記録から伝わります。その情景を思い浮かべながらヨーロッパ大陸最高峰を旅します。
小学4年生の時から宇宙の世界に興味を持ち、星の図鑑と見比べながら夜空を眺めていました。観察結果を鉛筆でスケッチ帳に記録します。気持ちは白衣を着た天文学者気分です。お気に入りの図鑑は『ロケット』。プラネタリウム解説員として天文教育に携わるようになっても有人飛行の分野への興味は尽きず、特に1960年代の宇宙飛行計画が大好きです。ガガーリンの記念碑を見上げた時、ロシアに来たことを実感します。
観光旅行ではありませんが、車を走らせながらモスクワの街並みを楽しみます。車窓から右を見ても左を見ても、自分がイメージしていたロシアらしい風景が流れてゆきます。今回のフィルムはポジではなくネガを持ち込みました。空港でのX線検査対策も完璧です。本数も限られているため写真に頼らずしっかり記憶にも残そうと一期一会の風景として丁寧に眺めます。
丘に登って市内を見渡します。登山が目的なのでモスクワに関する予備知識の乏しいこと、分からない建物は現地の方々から教えていただきます。ロシア語が話せなくても「あれは何でしょう?」みたいな表情だけで、皆さん親切に教えてくれます。感謝の気持ちも表情だけで伝わるようで、「どういたしまして」みたいな笑顔で返されると嬉しくなります。小さなことですが、このような会話(?)が積み重なってゆくと、到着したばかりの国ですが親しみを感じ始めます。
予備知識を持たない旅の醍醐味です。スキージャンプ競技場が突然現れ、驚かされます。
初めて見るスキージャンプ競技の練習風景。テレビとは違う迫力に見ていて飽きません。
広場でゆっくり過ごすことにします。
観光名所を見て歩くよりも、モスクワの生活感が伝わってきます。
皆さん何を話しているか分かりませんが広場での会話です。友達同士、恋人同士、家族連れ、老夫婦、その仕草と表情からなんとなく想像はつきます。子どもたちが楽しそうに遊んでいる光景に癒されるのは、世界共通です。
フィルムの本数が少ないため控えていたつもりですが、その楽しそうな雰囲気からつい撮ってしまいます。
明日は再び飛行機に搭乗し、その後は車での長距離移動になります。登山を通じて経験できる非日常的な世界に憧れますが、初めて訪れる国の公園で過ごすような、その国のごくありふれた生活感を楽しめる時間も好きなので名残惜しくなります。
ガガーリンの記念碑は、「実物を見た」というだけですぐに満足してしまいますが、公園で過ごす時間は飽きません。小さなバックをひとつ持って、世界各地の公園や広場、市場を訪れる旅も楽しそうです。ひとつ国へ行くと、行きたい国がひとつ増えます。旅好きの方々は、きっと皆さん同じでしょう。登山と旅に終わりがない理由のひとつです。
※2002年9月にフィールドに訪れた際の記事となります。