世界で初めて世界五大陸最高峰に登頂した冒険家・植村直己さんの活躍に、どきどき、はらはら、わくわくしていた小学生。通学路の世界しか知らない子どもにとって、スーパーヒーローです。その冒険家の遭難を知った時、「世界五大陸最高峰に登ってみよう」ぼわっと頭の中でそんな思いが広がりました。「憧れ」から「挑戦」に変わった瞬間、高校1年生の時でした。
「航空航路南回り」の次は「陸路国境越え」。旅心をくすぐる、素敵な響きです。かわいい車で地平線目指してひたすら走り続けます。
高層ビル群の都市部を出ると、すぐにナイロビ国立公園へ。草原風景が突然広がります。
フィルムカメラをザックから取り出しますが、慌てることはありません。今日は夕方までこの風景を眺め続けます。大雑把な地図を広げて、本日のドライブコースを確認すると、300kmほどの移動でしょうか。一日中この風景の中で過ごせることに嬉しくなります。
車は満席、登山の荷物で車内はぎゅうぎゅうです。エアコンもありませんが、窓を全開にして猛スピードで走り続ける気持ち良さが最高です。数日前まで、昼間でも真っ暗なプラネタリウムのドーム内で、星空解説の仕事をしていたことが信じられません。
ドライバーからは退屈していように見えてしまうのか、近くに座っている私に外を指していろいろ解説してくれます。何かが見えていて、飽きさせないように教えてくれているようですが、私の語学力では何を話しているのか分かりません。しかし、アフリカまで来てくれた日本人に少しでも楽しんでもらいたいというドライバーのおもてなし、お人柄はしっかり伝わります。その気持ちで嬉しくなってしまう笑顔に偽りはありません。
休憩を兼ねて久しぶりに車が止まります。お土産屋さんです。素敵な木彫りのお土産がずらりと並んでいます。突然のお客さんの来店にマンツーマンで商品を次々に紹介されると身構えましたが、ほったらかしのサービスに安心します。キリマンジャロ峰登山の記念に木彫りの小さなキリンを数個買いました。
アンボセリ国立公園に入っても風景は変わりません。しかし、しだいに家がぽつぽつと見え始め、国境が近いことに気がつきます。
車が止まった先にゲートが見えています。いよいよタンザニア連合共和国へ入国です。
車から降りると、お土産の売り子さんたちが集まります。スワヒリ語は分からなくても、こうゆう場面では何を話しているのか分かります。こちらも開き直って日本語で話していますが、しっかりと意味は通じているから不思議です。お断りしても皆さん追いかけてくるので、遠くから眺めたら現地の方々と無邪気に鬼ごっこでもしているように見えたのでは。
辞書を片手に、入国審査の手続きを始めます。