南緯32度、日本との時差12時間。日本列島の裏側、地球儀をぐるりと半周回した場所、世界最長8,000kmアンデス山脈の旅へ。日本の地平線の下、南半球の星空(宇宙)を眺めながら、南米大陸最高峰アコンカグア峰(6,960m)山頂を目指します。
南米大陸最高峰・アコンカグア峰(6,960m)登山 vol.1は こちら
エル・プロモ峰登山から、サンティアゴの街に戻ってきました。朝、カーテンを開けると、クリスマスの夜に過ごした教会が見えます。とても静かな教会の周辺を、一人散歩した同じ場所とは思えません。
サンティアゴでの日常生活、朝の様子を眺めます。これから仕事や学校へ向かう方々、どこの国でも朝は慌ただしく、活気のある風景は見ていて飽きません。国ごとに違う、その喧騒の音を聞きながら朝食の始まる時間まで部屋で過ごします。
アコンカグア峰への入山手続きを申請するため、チリ共和国からアルゼンチン共和国のメンドーサへ。マイクロバスで国境を越えます。登山という目的のご縁がなければ、走ることのなかった南米での道の旅が始まります。
ターミナルでマイクロバスの到着を待っているだけで、ザックひとつ背負って国々を気ままに旅するバックパッカーになった気分です。海に囲まれた日本列島のお国柄、「国境を越える」がひとつのイベントのように感じられます。
「本日も晴天なり」初めての南半球の夏。日本の盛夏とは違い、蒸し暑くありません。窓を全開にして走る、乾いた風の気持ちのいいこと。
お腹が空けばレストランへ。料理の美味しさは、天に任せます。
山岳地帯に入り、国境が近いことが分かります。道の旅も大好きです。50ccスクーターで海岸線に沿っての漁港をめぐる日本一周12,000km、250ccオフロードバイクで林道をめぐる日本一周30,000km、400ccオフロードバイクで国道をめぐる日本一周17,000km。何を探していたのか、求めていたのか、ひたすら走り続け、気がつくと日本列島を三周59,000km。毎晩、野宿しながら日本中の星空を眺めた旅でもありました。マイクロバスではありますが、窓を全開にしたアンデス山脈の風に、バイクでの旅を懐かしく思い出させてくれます。
メンドーサは爽やかな気候で、バックパッカーとして訪れたら安宿に泊まって数日間滞在したくなるような素敵な街です。しかし、メンドーサには申請のみの滞在。事務手続きを済ませた後、すぐに発ちます。国内旅行と違い、海外の場合は二度と訪れることがないと分かるだけに名残惜しくなります。
その街が日本との時差12時間、日本列島の裏側の場合「いつかまた」、「機会があればまた」はありません。
自然史系博物館を思わせるような、お洒落で落ち着いた館内の雰囲気に戸惑いながら、入山申請に必要な書類一式を受け取ります。小辞典を片手に、単語の意味を調べながら申請書を作成します。
必要項目を埋めてゆくにつれ、世界五大陸最高峰2座目となるアコンカグア峰登山が始まるという気持ちもゆっくり高ぶってゆきます。館内には、アコンカグア峰に憧れて世界中から集まった方々の多いこと。同じ目標(登頂)で集まった者同士、誰に話しかけても気が合いそうです。キャンプ地での再会が楽しみになります。私にとっての登山は、「山・星・人」三位一体です。