〈※本記事は、2015年4月にフィールドに訪れた際のアーカイブレポートになります〉
「世界最高峰」この言葉は様々なシーンで表現されますが、伝統のある物語を感じさせてくれます。地球上で最も宇宙に近い世界最高峰から見上げた空、見下ろした地平線はどんな光景でしょう。ローツェ峰から眺めた世界最高峰は、どんな山容なのでしょうか。想像が山のように膨らんでゆきます。
振り返ると「息をのむ光景」ありきたりな表現ですが、作家ではないので残念ですがこの言葉以外思い浮かびません。昨晩の降雪で、一段と美しさが増しました。山岳カメラマンでしたら、この光景を芸術作品として切り取れることでしょう。文章力、写真力もないので、自分自身がこの風景を眺めることが出来たという記録として残します。
エベレスト峰へ向かう方向にも、神々しい山々が連なっています。ヒマラヤ山域に入ってしまうと、普段の生活ではあまり縁のない「神々しい」という思いが日常茶飯事となります。
その魅力に憑りつかれた登山者が集まるエベレスト街道。人が集まる場所はビジネスチャンス、このような地にも素敵なカフェが。
カフェでのランチ、今日はおにぎり弁当です!登山での定番、おにぎりをヒマラヤでいただきます。その美味しいこと。標高のよる影響で体調の優れないメンバーもおりますが、おにぎりを美味しく思える食欲から高所順応も順調なようです。温かいお茶のお代わりも何杯目でしょうか。
標高8,000mゾーンに入る前に高所順応を兼ねて、ロブチェ・イースト峰(標高6,119m)登頂を目指します。そのベース・キャンプ地に到着です。緩やかに標高を上げてゆくハイキングは今日まで、明日から登山が始まります。
我々が泊まるテント村。このキャンプ地から眺めた星空の天体撮影を試みるため、方角を確認しながら夕方から明け方までの星座や惑星の位置を考えて、峰々にかかる星空をイメージします。星景撮影の準備は、昼間のこのような作業から始まります。この場所での緯度・経度・標高から、月が昇ってくる時刻と方角を調べます。月明かりで浮かび上がる峰々を想像しただけで、疲れなど忘れてしまいます。
山好き、そして星好きなので、昼夜24時間楽しめます。記念撮影の表情も心の底からの笑顔になってしまいます。
標高は5,000m、気圧544hPa。この希薄な澄んだ大気、光害のない、最高の天体観測地から眺めた星空の広がりを想像しただけで鳥肌が立ちます。世界中どの場所から眺めても星座は同じですが、その旅先から眺めることで星座たちに新たな思い出が重ねられます。自宅からその星座を眺めるたびに、ヒマラヤでの星空観望を思い出すことでしょう。
今回の遠征は登山が目的。明日から始まる山頂に向けての準備も、経験豊富なリーダーからの的確な指示の下、粛々と始めます。ここで日本から持ち運ぶべき登山装備の忘れ物が発覚したら致命的です。一通り揃っていることに安堵します。
こちらの山から銀河が昇り、
あちらの山へ銀河が沈んでゆきます。
水平移動から垂直移動が始まりました。ヒマラヤ登山の始まりです。トレッキング用のブーツから標高8,000m峰遠征用の特殊なブーツに履き替えます。帽子からヘルメット、ストックからアックス、ハーネスを装着しながら、ハイキング気分が消えてゆきます。
荒い息を整えながら登る横を登頂を済ませたチームでしょうか、挨拶を交わす間もなく軽快に下ってゆきます。
(個人的には)難所の岩壁を登り終えると、雪原が広がっています。その視界の広さから一段と眺望が輝いて見えます。多くの登山隊はこの雪原でロブチェ・イースト峰のC1を設置するそうですが、我々はより山頂に近い場所に設置するプランです。
今回は高所順応を兼ねての登りなのでBCへ一旦戻りますが、さらに標高を上げて出来るだけ希薄な大気、低酸素な条件に身体を馴染ませてから下山します。
本日の登山はここまで。BCへ戻る前、折り返し地点でおにぎり弁当をいただきます。そのお弁当の美味しいこと。この標高でも、おにぎりが美味しく食べられる体調の良さに嬉しくなります。ヒマラヤ遠征の経験豊富なリーダーのアドバイスに感謝です。日本各地の山でお弁当をいただきますが、おにぎりを食べた自己最高所記録の誕生です。