人類初の宇宙飛行を成し遂げた国、ロシア連邦。ヨーロッパ大陸最高峰・エルブルース峰は、その国にあります。ユーリイ・ガガーリン飛行士が宇宙から伝えた有名な言葉より、宇宙船ボストーク1号が発射された際に彼がつぶやいた「さあ、行こう!」という言葉が好きです。これから未知の世界に向かう気持ちが、短い交信記録から伝わります。その情景を思い浮かべながら、ヨーロッパ大陸最高峰を旅します。
ロープウェイ終点駅に到着。ロープウェイが雲を突き抜けて、眼下に雲海が広がっている光景を少しだけ期待していましたが、その願いは届きませんでした。風力階級0、静穏の状況で霧雲に包まれています。リフトに乗り継ぐ予定でしたが、本日は運行休止の様子。徒歩でガラバシ小屋へ向かいます。心もとないリフトですが、霧雲に消えてゆくその方向にガラバシ小屋があることを、しっかり教えてくれます。高所順応を兼ねて、ゆっくり登れて良かったのかもしれません。エルブルース峰登山での、最初の一歩です。
冬季はスキー場となる観光地。この静かな雰囲気から、日本のスキー場のように賑わっている光景が想像できません。
小雨が降っていましたが、止んでくれました。雲の切れ間から少しだけ見せてくれる青空に嬉しくなります。
初めて訪れる山は、眺める風景全てに驚かされます。
リフトに沿って黙々と登ってゆきます。広がる青空に気持ちまで明るくなります。登山に限ったことではありませんが、心持次第で足取りの軽さ、疲労の負担さの感じ方が変わります。その気持ちがそうさせてしまうのでしょうか、同じような景色を無意識に何枚も撮ってしまいます。
遠くからの眺めでも、クレバスの不気味さが伝わってきます。観光地の雰囲気に惑わされてしまいますが、山頂を目指す登山者としての入山なので、高山病や滑落には気を付けないといけません。
スタート地点が同じならば、どの登山チームも休憩するタイミング、休憩に相応しい場所は、ほぼ一緒。我々のチームと同じような会話で和んでいます。
クレバスが崩壊する音が響きます。皆、無意識に「おー」と声が出てしまいます。
標高3,750m、デザインにインパクトのあるガラバシ小屋に到着です。音を立てて転がりそうな大きなドラム缶にしか見えません。寝ている間に静穏から烈風となって、ゴロリと転がり始めてクレバスに落ちてゆく光景がリアルにイメージ出来てしまいます。頑丈に固定されてはいるのでしょうが、小屋の向きをを転がりやすい谷側に合わせなくても良いような気がしますが . . . 。幸い、我々のチームに割り当てられた小屋は、谷側の端っこの小屋ではありませんでした。
幼稚園生のような子どもが雪で遊んでいます。
ヨーロッパ大陸最高峰エルブルース峰の標高は5,642m。小屋ではありますが、そのキャンプ地に子どもが楽しそうに遊んでいる光景が不思議な感じです。遠くの方では、雪だるまを作っている親子の姿も。ロシアの冬季は厳しい寒さとなるため、秋季の日差しを存分に楽しまれるのでしょうか、お天気になれば女性男性関係なく、この場所で水着姿になって日光浴をされるとのこと。海外の登山を経験すると、いろいろなことが現場で学べます。無意識に「へー」と声が出てしまいます。
※2002年9月にフィールドに訪れた際の記事となります。