世界で初めて世界五大陸最高峰に登頂した冒険家・植村直己さんの活躍に、どきどき、はらはら、わくわくしていた小学生。通学路の世界しか知らない子どもにとって、スーパーヒーローです。その冒険家の遭難を知った時、「世界五大陸最高峰に登ってみよう」ぼわっと頭の中でそんな思いが広がりました。「憧れ」から「挑戦」に変わった瞬間、高校1年生の時でした。
登って来た同じ道を下りますが、その光景は同じ場所とは思えません。初めての海外登山、日本の山とは全く違う世界に驚くことばかりです。
麓の登山ゲート目指し、ひとりで黙々と歩き続けます。出発した時刻が早かったらしく誰にも会いません。
この視界の広い光景の中、ひとりで歩き続けていることが不思議に思えてきます。同時に心地良さも感じつつ、とても贅沢な時間を過ごしていることに気がつきます。
時々現れる、道案内のプレート。自分が感じている標高より、実際は1,000mほど高い場所であることに驚きます。その驚きが、残り少なくなった貴重なフィルムでありながらも、記念写真としてシャッターを押させてしまいます。
振り返って、登りで見てきたはずの風景を眺めますが、朝日による風景は初めて来た場所のように新鮮です。立ち止まったり、振り返ったりしながら、ゆっくりと下山します。麓への到着は、昨日のように夕方頃になると午前中の早い時間からイメージしてしまいます。
下りの道も一本道。リーダーに心配かけない程度に、時間をかけて最後までキリマンジャロ峰登山を楽しみます。
時々、凄いスピードで現地のポーターが通り過ぎてゆきます。重たい荷物を背負っていながら、挨拶の一言だけ声をかけるとすぐに見えなくなってしまいます。彼らにとって、登山は仕事。荷物を麓まで早く届けるという仕事の邪魔をしてはいけません。一度通り過ぎ去ったポーターが休憩しています。足を少し切ってしまった様子なので、絆創膏を差し上げると笑顔を見せてくれました。その笑顔に写真を撮らせていただきたい気持ちが一瞬湧きましたが、止めておきました。