世界で初めて世界五大陸最高峰に登頂した冒険家・植村直己さんの活躍に、どきどき、はらはら、わくわくしていた小学生。通学路の世界しか知らない子どもにとって、スーパーヒーローです。その冒険家の遭難を知った時、「世界五大陸最高峰に登ってみよう」ぼわっと頭の中でそんな思いが広がりました。「憧れ」から「挑戦」に変わった瞬間、高校1年生の時でした。
入国審査を済ませ、歩いて国境を越えます。タンザニア連合共和国から振り返ってケニア共和国を眺めますが、特に何も変わりません。
車に乗り込んで、再び爆走ドライブです。同じような風景が続きますが、いつまで眺めていても飽きません。風がとても爽快で、これが車本来の走る楽しさのように思えてきます。
タンザニア北部のオルドバイ渓谷は、猿人の化石が発見された有名な場所です。人類発祥の地に来ていること(帰ってきていること)を考えながら、ご先祖様はここから旅立たれたと想像しているだけで、草原にドラマが重なり、見えている単調な風景が壮大な空間に思えてきます。
キリマンジャロ国立公園に入りました。世界自然遺産の中を走っていることが夢のようです。
何時間走っても、道は一本道。アフリカへ行く3年前、バイクを日本から中国に船で運び込み、タクラマカン砂漠とゴビ砂漠の端のシルクロードを2,000km旅したことを思い出します。
まっすぐ伸びる道は、この先に何かが広がっていそうで、眺めているだけでわくわくしてきます。ご先祖様は、この気持ちが原動力となって、この住み慣れた地から離れ、南米大陸まで拡散したのでしょうか。
一本道は、振り返っても、一本道。寝っ転がってみたい気持ちになりますが、いつ爆走車が飛んでくるか分かりません。眺めるだけにしておきます。
キリンがゆっくり歩いています。自宅は動物園に隣接しているため、キリンは見慣れているはずでしたが、柵のない国立公園で眺めていると、キリンが新鮮に見えると同時に、完全なアウェーな心境になります。
目が合った瞬間、気分を害されたのか走り去ってしまいました。
シマウマは立ち止まっていましたが、何かに驚いた様子でこちらもすぐに去ってしまいました。その慌てて逃げてゆく姿に、私に驚いたのではなく、近くにライオンでもいるのでは?と心配になりました。こんなやりとりを何回も繰り返し、動物たちに遊んでもらいながら、キリマンジャロ峰登山口の麓に到着しました。初夏の高原そのもの、とても爽やかな気候です。