世界で初めて世界五大陸最高峰に登頂した冒険家・植村直己さんの活躍に、どきどき、はらはら、わくわくしていた小学生。通学路の世界しか知らない子どもにとって、スーパーヒーローです。その冒険家の遭難を知った時、「世界五大陸最高峰に登ってみよう」ぼわっと頭の中でそんな思いが広がりました。「憧れ」から「挑戦」に変わった瞬間、高校1年生の時でした。
「世界五大陸最高峰登頂」 とても魅力的な文字が連なり、自分の憧れが全て凝縮されています。想像だけの憧れの場所から、登山に向かう場所になるまで10年もかかりました。植村直己さんが遭難した1984年から10年後、1994年のことです。科学館に勤務するプラネタリウム解説員として3年目。たくさんの子どもたちが来館する冬休みの繁忙期、仕事を慌ただしく終わらせての出国です。
成田空港の搭乗ゲート前、世界五大陸のひとつ、アフリカ大陸に向かえる嬉しさと年末年始の仕事に区切りをつけられた安心感が混ざり合います。しかしその数分後、出国手続きが済むと半々だった気持ちは、アフリカ大陸に向かえる嬉しさだけになりました。
航空航路は南回り。
いくつもの空港を経由し、飛行機を乗り換え、空港のロビーで仮眠しながらアフリカ大陸を目指します。
クリスマスシーズンを迎え、機内は自分の国に里帰りする搭乗者でいっぱいです。聞こえてくる楽しそうな会話から、帰国が待ち遠しい気持ちがこちらまで伝わって来ます。経由する国の方が横に座るため、まるで各駅停車の乗り合いバスのようです。
機内食をきっかけに会話を楽しみ、空港に到着すると別れの挨拶を交わす、一期一会の飛行機旅です。
空港ごとにクリスマスのイルミネーションの飾り付けが異なり、そのお国柄が出ているようです。搭乗までの長い待ち時間も、フロアガイドを片手に空港散策で退屈しません。
現在ほど映画などの機内サービスは、充実していません。しかし、そのおかげで上空12,000mから緯度が低くなる星座や夜景を眺めながら、この10年間をゆっくり振り返る、とても素敵な時間となりました。