中国ロケ日記の続編です。旅は四川省から甘粛省へ。イスラム文化息づく内陸部に、古の道・シルクロードの残照を追いました。
四川省から泰嶺山脈を越え、中国北西部へ。甘粛省(かんしゅくしょう)南部の都市・成県に到着。
甘粛省はシルクロードの入口にあり、人口の多くを回族と呼ばれるイスラム教徒が占めています。その起源は7世紀。アラブやペルシャとの交易を通じてイスラム化した人々の末裔です。礼拝のため、モスクへ向かう男性。穏やかな笑顔に、深い信仰に根ざす心の安らぎを感じます。
若者もバイクでモスクへ。四川省とは一転、街は中央アジアの雰囲気。
街角の揚げパン屋。夫婦で40年、ここでパンを作り続けているのだそう。アツアツをほおばると素朴な甘みが広がりました。「うまいだろ?」と笑顔の店主。
清真料理(中国のムスリム料理)の食堂。壁の額にはアラビア語で「アッラーの他に神はなく、ムハンマドはアッラーの使徒なり」という、イスラム教の信仰告白が。
清真料理は、中国各地に暮らす回族により、地域の食材を取り入れながら独自の発展を遂げてきました。清真とは「汚れのない」という意味。イスラムの戒律(ハラル)に則り、豚肉や豚由来の調味料、ラード、酒類の使用が禁止されています。写真はじゃがいもの細切り炒め。塩で味付けされたあっさり味。長旅に疲れた胃にはやさしいひと品でした。
街を出て農村へ。山々は地平の彼方まで開墾され、林檎畑に。
平地は麻、胡麻、とうもろこし畑が続きます。
家は高い土塀に囲まれたシルクロード様式の佇まい。人々は漢語を話すものの、そこはまさにイスラム世界。以前旅したアフガニスタンを思わせる光景に、他民族国家・中国の多様性を実感。
豊かな農村に見える一方、甘粛省は中国で最も貧しい地域。都市部でも、上海との収入格差は5倍以上といわれています。独り佇む少年も、両親は出稼ぎから帰らぬまま。経済的理由により、中学校を中退したのだそう。本当は、学校に行きたいんだ…と少年。格差が拡がり、まるで21世紀と19世紀が混在する中国社会。その現実に、成都市出身の同行通訳もショックをうけたようでした。
夕刻。子供達が集まってきました。初めて見る日本人に興味津々。日本はどんな国?と聞くと、トヨタ、ホンダ、ポケモンの国!
日没。「アッラーフ アクバル(神は偉大なり)」。モスクからアザーン(礼拝への呼びかけ)が聴こえてきました。それを合図に、子供達は家路へ。夜の帳が静かに村を包みます。
すべての子供達に幸あれ!
今回使ったアイテム
キャリーケース:clamshell 80、バックパック:eclipse pro 27、フリース:trail fleece、シャツ:delta S/S