冬の週末。香川県を旅してきました。見知らぬ土地へのぶらり旅、果たしてどんな景色に出会うのか。
羽田から高松へ。翼の先に奥深き四国の山々が迫ります。四国山地はまだ未踏。西日本最高峰の石鎚山や剣山、徳島の祖谷山など、登りたい山、訪れたい土地がたくさん頭に浮かびます。
空港から市の中心部へは車で約30分。繁華街の瓦町周辺を散策することに。
高松を歩くのは小学生のとき以来。当時はまだ瀬戸大橋がなく、ブルートレイン「瀬戸」号と国鉄・宇高連絡船を乗り継ぎ、高松港に上陸しました。祖母に手を引かれながら見た、活気溢れた昭和の名残を追うように、古いアーケードを巡ります。
高松出身の作家・菊池寛にちなんだ通り。海外では人名がつく地名は一般的ですが、日本ではあまり馴染みがなく、とても印象に残ります。
八百屋の店先。地元野菜の豊富さに香川の豊かさを感じます。それにしても安い。
古書店「な夕書」へ。店主に電話をかけ(予約制 070-5013-7020)路地裏の古民家にあがると、そこは知のワンダーランド。文学・思想から食・民俗・サブカルまでジャンルは多岐にわたり、タイトルを目で追うだけで飽きません。古書との出会いも一期一会。旅の楽しみのひとつです。1時間ほど滞在し、旅行記と写真集を購入。リュックサックが少し重くなりました。
宿泊は仏生山温泉「まちぐるみ旅館」へ。温泉といっても観光地ではなく、高松市郊外ののどかな住宅地。モダンな日帰り温泉と民家をリノベーションした宿泊施設を中心に、夕食は地元の料理店、朝食はカフェやうどん屋さん、物販は雑貨店へ、と街全体を旅館に「見立てた」まちづくりで注目されています。2005年の開湯以来、子育て世代を中心に県外からの移住者も増えているのだそう。
翌日は小豆島へ。高松港からフェリーで1時間の船旅。何事もスピードの速い今の世の中、のんびりとした海の旅もよいものです。船のゆらぎ、心地よいエンジン音。穏やかな時間を潮風が運びます。
小豆島は人口およそ3万人。船でしか渡れない離島のなかでは国内最大の人口を擁します。最高峰・星ケ城(標高817m)をはじめ、渓谷と奇岩連なる山々が船を迎えてくれました。
小豆島八十八箇所の札所・西乃瀧を参拝。岩山の中腹にある、小豆島最古の山岳霊場です。
振り返ると紺碧の海と空。「さぬき百景」にも選ばれた素晴らしい眺め。「夕陽の時は海が黄金色に染まって、それはそれは美しいですよ…」と札所を守るおばあさんが教えてくれました。
岩肌に聳える鋭い岩峰。「金剛界行場」または「東の行場」と呼ばれる、密教曼荼羅の金剛界に位置づけられた登り行場です。
行場へは護摩堂の裏手から修験者が架けた梯子伝いに登ることができます。グローブを外して梯子に手をかけると、凍てつくような冷たさにハッとさせられました。「六根清浄…」と唱え、慎重に歩みを進めます。
足元をみるとなかなかの高度感。風化が進んだ岩肌は針山の如く、まさに行場であることを実感させられます。
かつて修験の人々は海の彼方に極楽浄土を見出し、瀬戸内各地に霊場を開きました。讃岐国出身の真言宗開祖・空海上人も小豆島を巡り、修行・祈祷を重ねたと伝わります。その足跡を島の人々が整備し、小豆島八十八箇所となりました。日本を旅すると、北は東北、南は九州まで、全国各地で空海(弘法大師)ゆかりの地や伝承・伝説に出会います。これほどまでに信仰を集め、人々を救い、心の拠り所を遺した旅人は、他に思い浮かびません。輝く海を眺めながら、しばし、古の旅路に想いを馳せたのでした。
次回も香川へ。旅はつづきます。
今回使ったアイテム
ジャケット:pioneer coat (unisex)、concordia down jkt、フリース:hybrid fleece、パンツ:journey narrow pants、ハット:WG rib beanie、グローブ:PSP glove Ⅱ