9月に2週間、四川省から甘粛省、陝西省を旅してきました。今回は四川省北部の景勝地・剣閣県をレポートします。
ロケ5日目。四川省北部の町、剣閣県を訪れました。四川盆地とチベット高原を隔てる龍門山脈に位置し、平坦な四川盆地とはうって変わって緑豊かな高原都市の様相です。
龍門山脈はヒマラヤ造山活動の東端にあたります。チベット高原の強固な岩盤が四川盆地を押しやり、隆起と侵食を重ねて独特の景観を産み出しました。ジャイアントパンダやレッサーパンダなど希少生物が生息。生態系、生物多様性の面からも非常に貴重な地域です。地震多発地帯でもあり、2008年の四川大地震では大きな被害をもたらしました。
サルスベリの花が満開でした。サルスベリは雲南省〜四川省が原産地。夏から秋にかけてピンクの花を咲かせます。他にハンカチノキ、メタセコイアが四川省原産の木として知られています。
剣閣県が誇る史跡・剣門関へ。四川盆地への入口となる急峻な渓谷に穿かれた砦です。古来「剣門関を得れば四川を得る」と言われ、幾多の戦の舞台となりました。特に三国時代、蜀漢の諸葛孔明(184~234年)による北伐が有名です。楼閣は2008年の地震で倒壊したものの、翌年再建されました。
剣門関に立つ諸葛孔明の石像。『三国志』の英傑として2千年近い月日を経た現代も、多くの人々の尊敬を集めています。中国の歴史上最も人気のある人物のひとりでしょう。
中国はいま空前の旅行ブーム。史跡のテーマパーク化やアトラクションなど、あの手この手で観光客を呼び込みます。三国時代の兵に扮した青年が、往時の雰囲気を偲ばせます。
剣閣県をあとに一路北へ。北京と雲南省を結ぶ京昆高速道を走ります。経済発展が続く中国ではいま、高速道と新幹線建設が突貫工事で進行中。高速道の総延長は13万キロを突破(日本は約9千キロ)。地球4周分に迫る勢いです。
夕刻、四川盆地を見渡す丘に登りました。霞みの先に龍門山脈(最高峰:九頂山4,984m)。その向こうには遥か西域、チベット高原が広がります。中国の広大さ、悠久の時の流れを感じた情景でした。そして旅は続きます。