冬の週末。香川県を旅してきました。見知らぬ土地へのぶらり旅、果たしてどんな景色に出会うのか。
香川県善通寺市。丸亀平野西部に位置する中讃地方の中核都市。真言宗の祖・空海(弘法大師)生誕の地として知られています。
五岳山・善通寺。唐から帰国した空海が807年に開基。京都の東寺、和歌山の高野山とともに弘法大師三大霊場のひとつであり、四国八十八箇所75番目の札所。背後には香色山・筆山・我拝師山・中山・火上山の五霊山が連なります。
境内では新年を迎える準備が進んでいました。初詣は20万以上の人出で賑わうそう。
広大な境内は西院と東院に分かれています。回廊沿いの塔頭寺院には四国八十八箇所の御本尊が並んでいました。塔頭を一周すれば八十八箇所を拝んだ功徳があると言われます。
弘法大師修行像。杖と鉢を手に遍路を導く様は、全国の古刹でお馴染みの姿でしょう。伝説では、空海は815年に四国遍路を創設。以後時空を超え、遍路をゆく全ての巡拝者を導き、ともに歩くと言われています。巡拝者は弘法大師と一緒に旅をしているという意味で「同行二人」と書かれた衣や笠を身につけ、悟りの旅路に出るのです。
私の祖父は京都で炭問屋を営む商人でした。食糧難だった戦時中は仕事のかたわら東寺の朝市で草履を売り、一家の暮らしを支えました。そのご縁に感謝し、祖父は生涯、弘法大師を篤く信仰したそうです。そして父も退職後、祖父の供養を願って四国遍路へ旅立ちました。疲労や道迷い、雨風に遭いつつも、美しい景色や地元の方々の親切さが深く心に刻まれたそうです。日焼けし、「旅人」となって帰ってきた父の、穏やかな笑顔が忘れられません。
この道中でも、杖を手に冬の野をゆくお遍路さんを目にしました。空海がこの世を去ってから1200年。その足跡はあまねく各地で伝説となり、今も人々を心の旅へ誘います。いつか自分も父が歩いた巡礼のみち、四国遍路を辿ることでしょう。その日を思いつつ、空海の生地・善通寺を後にしました。
今回使ったアイテム
ジャケット:pioneer coat (unisex)、フリース:hybrid fleece