冬の週末。香川県を旅してきました。見知らぬ土地へのぶらり旅、果たしてどんな景色に出会うのか。
香川県小豆島。高松市の沖合20kmに浮かび、瀬戸内海では淡路島についで2番目の大きさです。
オリーブ、そうめん、醤油、佃煮、ゴマ油が島の名産品。温暖な気候と豊かな自然、そして離島ながらも程よい人口と経済規模もあるため、近年は年間300人以上が島に移住しています。
小豆島そうめん発祥の地・小豆島町旧池田町にある真砂喜之助製麺所を訪れました。むかしながらの製法を今に伝える、家族経営の工房です。三代目・博明さんと4代目・淳さんが快く迎えてくださいました。
冬の風物詩。そうめんの天日干し。
島で素麺が作られるようになったのは400年ほど前。小麦栽培に適した風土、素麺づくりに欠かせない塩と油が豊富なことから島の人々に広がりました。小豆島そうめんは、製造にごま油を使い、自然の力をかりた天日干しが特徴です。
ときおり手を差し入れ、肌の感覚で乾き具合を判断しながら、光と風のあたる位置を変えてゆきます。
阿吽の呼吸で作業を進める真砂さん父子。日の出から日没まで、手間ひまかけて干されることで、豊かな風味とコシのある麵が生まれます。
素麺がゆらぐ様はまるで現代アートのよう。天日干しされた麺は裁断、包装されたのち、全国へと旅立ちます。小麦の甘い香りがただようなか、日本の食文化の奥深さをあらためて感じたのでした。
素麺の次は醤油蔵へ。安田地区にあるヤマロク醤油を訪れました。創業以来、吉野杉の大桶を醸造に使用。明治初期に建てられた土蔵は、国の重要文化財に指定されています。
150年以上使い続ける木桶には、乳酸菌や酵母など醤油作りに欠かせない微生物がびっしり。温度調整や微生物の添加などは一切行わず、木桶や蔵に棲む微生物のちからでゆっくりと発酵・熟成されてゆきます。
なお、醤油蔵を見学する日は納豆を食べてはいけないことになっています。納豆菌は醤油を作る菌より強いため、納豆菌を蔵に持ち込まぬための対策です。
木桶の上部へあがらせていただきました。三十二石(約6,000リットル)の樽の中ではふつふつと泡が立っています。1年以上の時間をかけ、ゆっくりと熟成することで、まろやかでコクのある、香り豊かな醤油が誕生します。
現在、木桶を使った天然醸造の醤油や味噌の生産量は、流通全体の1%以下。世界無形文化遺産である日本食にとって、古来の製法が失われつつある危機的状況と言えるでしょう。小豆島の地場産業が、日本の伝統を守り続けているのです。
島南部を巡ったのち、午後のフェリーで高松へ。再訪を誓いつつ、冬の海原を進みます。
次回は善通寺へ。弘法大師空海の生まれ故郷を訪ねます。
真砂喜之助製麺所(0879-75-0373)http://www.kinosuke.net
ヤマロク醤油(0879-82-0666)http://yama-roku.net
今回使ったアイテム
ジャケット:pioneer coat (unisex)、concordia down jkt、フリース:hybrid fleece、パンツ:journey narrow pants、ハット:WG rib beanie、グローブ:PSP glove Ⅱ