世界中を旅するTRANSITが、毎号karrimorのアイテムとともに旅をする企画。今回は長期のバックパック旅行を快適にしてくれるjaguar graceを背負って、南インドをめぐる旅。インド亜大陸西海岸に位置するケーララ州を南下し、3つの海が交わる最南端の聖地へ、そこから東海岸を北上しタミル・ナードゥ州の州都・チェンナイまで。北インドとは違う時間がゆったり流れる南インドでみつけた、マジカルな時間と食卓の風景。
旅のはじまりはフィッシュカレー
まずはケーララ州の中心地、かつて香辛料貿易で栄えた港町コチへ。ベジタリアンの多い南インドだけど、海に面したコチの名物はフィッシュカレー。ローカルが集う店で、ライスに数種のつけあわせがついたミールス(定食)に、スパイスの効いた激辛フィッシュカレーを追加でオーダー。
ドライバーが憩う街のスタンド
コチの新市街・エルナクラム地区を散策していると、笑顔で手招くおじさまたちに遭遇。ティファン(軽食)やチャイを売る街のスタンドは、リクシャードライバーたちの憩いの場。日本の立ち食いそば屋やファストフード店のような役割を担っているようで、ドライバーたちが朝食をかきこんでいた。チャイを一杯いただきました。
ここがインド!? ビーチのあるフォートコチ
アラビア海に面したフォートコチ。ビーチでは青い海を見てはしゃぐインド人観光客の姿が印象的だった(さすがに泳ぐ人はいなかったけど)。歴史的にヨーロッパ人の居住区だったことから中心部は教会をはじめとするコロニアル建築も多く、近年は洒落たカフェや雑貨店も増えている。
コチの旧市街と新市街をボートで移動
エルナクラム⇔フォートコチ/マッタンチェリー間は、陸路だと遠回りになってしまうため、ボートでの移動がおすすめ。ちょうど夕方に乗船したため、コーラルオレンジの美しい陽光がボートに差し込んだ。市民の足でもあるので、片道4~7ルピーほどとリーズナブル。(1ルピー≒1.7円)
エルナクラムのサウス駅とノース駅
カニャークマリへ移動するため、鉄道駅へ。早朝、余裕をもってサウス駅に到着したものの、掲示板に予約の列車の時刻が出ない。不思議に思い駅員に尋ねると、予約していたカニャークマリ行きの列車はノース駅からの出発と判明し、いそいでノース駅に向かう。なんとか間に合ったものの、エルナクラムには2つの鉄道駅があるのでご注意を。
二等寝台列車でカニャークマリへ
インドの列車には車両の等級がいくつかある。静かに過ごしたい人はコンパートメントタイプのファーストクラスがいいけれど、インドのリアルな空気感をあじわうには二等寝台で。エアコンが効きすぎていることも多いので、苦手な人はACなしがよさそう。今回は昼間の移動だったので、車窓の風景をのんびり楽しみながら移動。
2食目のミールス in カニャークマリ
ランチの時間になると提供されるミールス。基本のおかず(カレー)は異なるけれど、ローカルなお店では50~80ルピーほどと財布にやさしい。しかも、ライスとおかずがおかわり自由の店も多い。どの店にも手洗い場があるため、手を洗って右手だけで食べるのがインド流。数種のカレーをミックスして自分好みの味を見つけるのも楽しい。
巡礼者と観光客でにぎわう参道
アラビア海、インド洋、ベンガル湾という3つの海が交わるヒンドゥー教の聖地・カニャークマリ。インド最南端のコモリン岬に立つ、クマリ・アンマン寺院へとつづく参道の両側には土産物や食べ物の屋台が並んでいて、巡礼者やツーリストでにぎわっている。まるで縁日のよう。
コモリン岬のビッグなシンボル
南端のガートまで歩くと左手に見えるのが、海上に浮かぶヴィーヴェーカーナンダ岩。宗教改革者ヴィーヴェーカーナンダが瞑想したことで建てられた記念堂とタミル文学の著名な詩人ティルヴァッルヴァルの巨大な像を背景にできる絶好の撮影ポイント。対岸から眺めるのもいいけれど、時間があればボートで岩へと降り立つもよし。
海に沈む夕日に祈りを捧げる
アラビア海側に沈む太陽。昇る朝日と海に沈む夕日が見られる唯一の場所ということで聖地になっているだけあって、ガートや浜はヒンドゥー教徒でひしめいていた。太陽に向かって真剣にお祈りする人や海で沐浴する人の姿もあり、神聖な気持ちになる。この地が信仰の場として息づいていることを改めて感じた。
ドレスアップして日の出を待つ女性たち
翌朝、ヴィーヴェーカーナンダ岩方面から昇る朝日を拝むため、6時前に再びコモリン岬へ。撮影当日は曇り空だったため、日の出を待つ巡礼者の表情も曇りがち。ともあれ、すかっと目も眩むような日の出はお預けでしたが、色とりどりの鮮やかなサリーで着飾った女性たちに魅せられました。
人気店で食べたミールス in チェンナイ
チェンナイの人気店〈ラトナ・カフェ〉でいただいたミールス。このあとサンバルやラッサムといったスープも供されて、本当に食べ飽きることがなかった。もちろんおかず単品で食べてもいいけれど、ミックスすると複雑にマジカルに味覚が変化していくので、1合分くらいあるライスもぺろり。
アイスクリームボーイのほほえみ
チェンナイの市場周辺を散策中に出会った男の子。とくに深い意味はないのですが、とってもかわいかったのでカメラを構えると、母親が合図をしてくれて男の子がこちらに向かって微笑んでくれました。こうした瞬間に出合えるのは南インド旅ならでは。なんてことのない現地の日常が、異邦人にとっては旅なのだと思う。
花売りの少女の真剣な眼差し
南インドの街角では花がよく売られている。神様に捧げるための輪飾りもあるけれど、少女が編んでいたのは髪飾り用。南インドでは女性は後ろ髪に結った三つ編みに、花を飾るのがお洒落のお約束なのだ。車や人が行き交う通りで黙々と花を編んでいた少女の姿に惹かれてシャッターを押した。
花で飾った少女の後ろ髪
前出の髪飾り用の花をつけていた十代の少女たち。色鮮やかなサリーやアクセサリーで着飾った彼女たち、きけば友人のウエディングパーティに向かっている最中だった。近くに寄ると、ジャスミンの甘い香りがふわっと鼻をつき、天然の香水の効果もある。南インドの女性は魔性だ。
フレンチの残り香放つミールス in ポンディシェリー
南インドの旅で毎日食べ続けたミールス。こちらは旅の終盤に、チェンナイから車で4時間ほどのポンディシェリーにある〈スルグルレストラン〉でいただいたもの。旧フランスの植民地だった場所ゆえか、スープやアイスクリームのデザートもサービスされた。
- TRANSIT 編集部
生と死が一体となった混沌のガンジス川や、豪華絢爛なタージ・マハルをはじめとするいわゆるインドのイメージは、実はほとんどが北インドのもの。今回のTRANSIT35号では、南へと舵を切り、南インドとさらにその先の海洋に浮かぶスリランカを旅先に選びました。穏やかな人びと、ゆったりと流れる時間、身体にすっと溶け込むスパイスの効いた食事。スローに自分の歩幅で旅をして見えてきた、”癒やしの南インド・スリランカ”を一冊にまとめた保存版。