世界中を旅するTRANSITが、毎号karrimorのアイテムとともに旅をした裏話を公開。今回、vector shirtsを旅の相棒として向かったのは、“楽園”といわれるハワイ諸島のなかでも、火山活動が今もつづき、溶岩大地やジャングルなどの特異な自然環境をもつハワイ島。神様へ捧げる踊りであり祈りの言葉でもある「フラ」や、ハワイアンにとって神様そのものである自然のなかに、人びとの信仰世界を探した。
ハワイの信仰世界が色濃く残るハワイ島へ
オアフ島のホノルル空港で離島便に乗り換えて、ハワイ島の東の玄関口であるヒロ空港へ。ツーリストが多くリゾート感満点のコナ路線に比べて、ローカルが多い印象。機上からは、いくつもの虹がお出迎え。短時間で濃くなったり薄くなったりして、虹が動くものだということを知った。
幻想的な雰囲気を醸すキラウエアの火口
到着してすぐさま向かったのは、南部の火山地帯を中心に広がるハワイ火山国立公園。今、地球上でもっとも活発な火山といわれるキラウエアの火口が見られる展望台を訪れた。あいにくの雨だったが、火口のマグマによって赤く照らされた霧がとても幻想的。
ハワイアンにとっての火山とペレ
展望台のミュージアムでは、ハワイの創世神話に登場する火山の女神・ペレのちょっと恐い絵を発見。ハワイ島の火山に住むといわれるペレは、美しく情熱的だが気が荒く、嫉妬や怒りですべてを焼き尽くすこともある。ハワイアンとっては畏怖の対象だ。
日本人なら懐かしさも感じるヒロの町並み
ハワイ島の経済の中心であるヒロは、かつて移住した日系人がつくった町。日本名のビルや日本食を出す飲食店が立ち並ぶそばで、ヤシやバニヤンツリー(ガジュマル)などの南国の大木が風に揺れていたりして、独特の雰囲気が漂う。
ハワイ王国を統一した王様にご挨拶
ヒロ市内のワイロア・パークにヒロ湾を見晴らして立つカメハメハ大王の像。ハワイ諸島に全部で4つあるうち、もっとも背が高い。この王の時代にはハワイは西洋と接触しており、王は銃を使い武力で国を統一したとか。あの有名な歌のイメージからは意外な事実。
新鮮な切り身を豪快にいただくソウルフード
お昼にいただいたポケ丼。ハワイ語で「切り身」を意味するポケは、マグロやカツオなどの鮮魚をしょう油やごま油、海藻などで和えたハワイのソウルフード。近海で獲れた新鮮な魚にこだわるヒロの「SUISAN」は、ローカルにもファンが多い人気店。
地元の若者に人気のフォーマイルビーチ
ヒロのほど近くにある、カールスミス・ビーチパーク、ロコの間では通称フォーマイルビーチ。この手前にある湾は、ウミガメに会えることで有名なスポットだが、今日は人も多いので、もしかしたら現れてくれないかもしれない……
神の使い、ウミガメとの出会い
と思った矢先、遭遇に成功。しかも、向こうから近づいてくるほど人懐っこい。ハワイでは、ウミガメは神の使いとして古くから大切に扱われてきた特別な生物。日本の家紋にも相当するアウマクナ(祖先の神様)がウミガメという家族もいるほど。
暮らしの一部であるビーチ
ビーチの手前は、ヤシの木やバニヤンツリーが茂る、芝生が気持ち良いスペースになっている。海で泳ぐのはもちろん、他愛のない話を楽しんだり、スラックラインを楽しんだりと、ビーチでは思い思いに過ごすロコの姿が微笑ましい。
女神が住まう、虹の滝
同じく市内近くにあるレインボーフォールズ。名前の由来はもちろん、滝壺に虹が出る確率が高いことから。写真では小さく見えるが、滝底は直径約30m。雨の多いヒロならではの、大迫力の落水量は必見。ここに女神が住むという神話もあるとか。
フラ・カヒコ(古典フラ)の神髄へ
フラ・カヒコは、フラのなかでも伝統的な様式を継承するもの。ペレを主神とする「ハーラウ・オ・ケクヒ」の教室で、踊りをみせてもらった。物音をたてることすらはばかられるような緊張感のなか、ひょうたんの音と力強いステップだけがビートを刻む。
厳格な決まりがあるフラの衣装
その夜は、オーラパ(上級者)クラスのレッスン風景を撮影。手首・足首に巻くレイは踊り子自らで作るのが基本で、たとえば新月の夜に自分で獲った貝を煮て食べた殻だけを使わなければならない、などの細かなルールがある。この日のレイはシダの葉。
溶岩大地に表れた巨大な虹
翌日は、マウナロアの麓の方をドライブ。あたりに遮るものがないため常に強風が吹いているような場所だが、風が止むと、自分の足音しか音が聞こえないような深い静寂が訪れドキリとする。突如、カメラにおさまらないくらい大きな虹が表れた。
過酷な大地に咲く花
ハワイ島を代表するオヒア・レフア(オヒアの花)。溶岩などの過酷な環境でも、空気中の水分を溜めながら生きられるという強さをもっている。花に無数の水滴がついているのはそのため。ハワイ島では、フラのレイにもよく使われる。
雲海ごしに望むマウナケア
マウナロア山頂から、雲海から顔を出したマウナケアを望む。標高およそ4100m。標高およそ4200マウナケアもだが、どちらも頂上まで車(4WD)でアクセスできることに驚く。これほど広大な溶岩を目の当たりにし、この島が火山の島だということを実感する。
溶岩に飲み込まれたカラパナ地区
ヒロから車でおよそ50分。カラパナでは、2000年代までのキラウエアの噴火によってできた溶岩大地が見られる。昔はここから海岸線が見えたというが、高台に立ってみても、海は見えなかった。「We arise again」とかつてのハワイ王国の王族を描かれていた。
ジャングルでのエコロジカルな暮らし
ハワイ島の東、ヒロとボルケーノの間に位置するのがプナ地区。ジャングルに囲まれたこのあたりは、電力はソーラーパネルやジェネレーターでまかなったり、雨水を利用したり、自然になるべく迷惑をかけないエコロジカルな生活をしている人も多い。
ヒッピーが集まる村
その近くにある「CINDER LAND」は、ドミトリーや共有のキッチン、ヨガスタジオなどが点在するエコビレッジ。ヒッピーやレイブパーティ好きが集まるようで、訪れたときにはレイブパーティ明けで休んでいるとのことで、村はやけに静かだった。
ロコが集まるナイトマーケット
毎週水曜開催の、カラパナのナイトマーケット。オーガニックフードやハンドクラフトの露店が出たり、ハワイアンミュージックのライブが行われたり、手作り感溢れる催し。プナエリアの人たちにとっての貴重な娯楽のようで、結構なにぎわいだった。
- TRANSIT 編集部
「神々の島」を特集したTRANSIT32号で、取材クルーが向かった島のひとつがハワイ島。世界に15種ある気候のうちの13種をもち、火山による溶岩大地の形成が現在もつづくハワイ島は、神話にゆかりのある場所も多く、ハワイ諸島のなかでも特殊な地。この島でハワイアンは、古くより、ひとつひとつの自然を神様(祖先)としてとらえ、大切に守ってきた。そんな信仰が今も大自然の暮らしや踊りのなかに、独特の信仰世界を垣間みた。