アメリカ、ジョシュアツリー国立公園40日間の旅_前編【アンバサダー 稲田千秋】

3月〜4月の約40日間、アメリカ、カリフォルニア州のジョシュアツリー国立公園へ行ってきました。海外遠征はとっても久しぶりで、新型コロナが猛威をふるいはじめた2020年以来、実に3年ぶりです。しかも今回は初の試み、0歳の赤ちゃんを連れての長期キャンプです。クライミングだけでなく、ワクワクする冒険になること間違いなしです!

ジョシュアツリー国立公園は、ロサンゼルス空港から東に240kmほどのところにあります。だいたい、車で東京から松本までより少し遠いくらいのイメージです。

今回、航空会社はLCC(格安航空会社)のZIPAIRを利用しました。「赤ちゃん連れなのにLCCで大丈夫?」という声が聞こえてきそうですが、実はZIPAIR、とくに体重9kg以下の小さい赤ちゃん連れだと、他のFSC(ANAなどの通常の航空会社)にも無い嬉しい制度(チャイルドシートなど)が標準でついていて、スタッフさんの席も近く、色々と親切にしてもらえたので行きも帰りもとっても快適でした。

11時間のフライトを乗り越え、空港に着いたら、無料シャトルバスに乗ってレンタカー会社へ向かいます。大堂海岸も一緒に行った友人家族と共に、子連れ2家族分のクライミングギア、キャンプ道具、車用のチャイルドシート、赤ちゃんのおむつ数百枚などなど・・・全部合わせて100kgをゆうに超える荷物を抱えていたので、まずシャトルバスにのりこむところから一苦労でした。

空港には午前中のうちに着いたのに、レンタカーを確保し、途中のスーパーやアウトドアショップで買い出しをして、240kmのドライブの末キャンプ場にたどり着くころには、太陽はすっかり沈んでしまいました。

はじめ1週間は、事前予約可能なBlack Rock Canion Campgoundに泊まりました。国立公園の北西の端に位置しています。1サイト1泊25ドルで、テント3張り、大人6名、車2台までOKです。ここからメインの岩場までは車で30分ほどで、一番近いWalmart(スーパー)まではなんと10分です。

時差ぼけや長旅の疲れを癒しつつ、到着2日目くらいから少しずつクライミングを開始しました。

ジョシュアツリー国立公園には、奇抜で雄大な景観が広がっています。約32000ヘクタールの広大な砂漠の大地に花崗岩の塊がゴロゴロと転がっており、沢山のジョシュアツリーが林立しています。ジョシュアツリーは木に見えますが、リュウゼツラン科の多肉植物です。とても愛らしい見た目で、まさにここのシンボルとなっています。

ボルダーはとにかく沢山あって、小さい岩もあれば、ボルダーと呼ぶには大きすぎる7、8メータークラスのハイボルダーもあります。3月はとくにボルダリングを楽しむボルダラーで賑わっていました。

また、ヨセミテのような数100メートル規模の巨大な壁はないものの、シングルピッチから、2〜3ピッチ程度のマルチピッチクライミングを楽しめる100m内外の大岩がとにかく沢山あります。花崗岩のパラダイスです。

さっそく5.7〜5.9といった簡単めなグレードからロープクライミングを開始しました。しかし、低グレードが侮れません!ボルトのあるルートではボルト間隔が遠くランナウトしており、クラックのルートもクラックが乏しかったり細かったりで、ムーヴもグレードの割に難しく感じます!

実は、トポ(クライミングのガイドブック)の冒頭にも、ジョシュアツリーの岩場を象徴するようなこんな文章が書かれています。

「レッドロックス(お隣ユタ州にある砂岩の岩場)なら5.12台を楽しく登れるのに、なぜ5.10台で怖い思いをしにジョシュアツリーへ行くの?」
そう、ここジョシュアツリーでのクライミングは、厳しく、ナチュラルで、それゆえ恐ろしいと評判なのです!

そんなジョシュアツリーの洗礼を受けつつ、徐々に心と身体を慣らしていきながら、一週間ほどたったころ、キャンプをメインの岩場の中にあるHidden Valley Campgroundに移動しました。

Hidden Valley Campgraoundはクライマーをはじめ観光客に人気のキャンプ場です。キャンプサイトはまさに岩場の中にあり、岩に囲まれています。サイトの中にボルダーがあったり、ロープクライミングの岩場のふもとにサイトがあったりします。電波も水道も無いなど、はじめのキャンプ場と比べると少し不便ですが、岩パラダイス感はマックスです。

そんなワイルドな環境ながら、それでも街まで車でたった30〜40分なので、子連れキャンプにはやはり便利な環境ですね。子供たちものびのびと砂漠の大地を満喫していました。ジョシュアツリーの旅、次回に続きます!

稲田 千秋

稲田 千秋(いなだ・ちあき)形成外科医、クライマー。学生時代から登山、クライミングに熱中し、季節やジャンルを問わず様々なスタイルでフィールドアクティビティに興じる。現在はフリーランスで世界中を旅しながらクライミングを楽しむ傍ら、国際認定山岳医として、日本の山岳医療発展のため活動する。2016年 Yosemite国立公園 El Capitan "The Nose"完登。2019年 ペルーアンデス Alpamayo "French Direct"登攀など。

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