わたくしごとですが、この度、第一子を授かりました。妊娠中の10ヶ月間は、もちろんこれまで通りとはいきませんが、体に無理のない範囲で山やクライミングも満喫していました。
昨年秋には、北陸の茗渓・境川大畠谷で沢登り。人生初のノンアルコールの沢中泊でした。ここから”2人”の冒険がはじまりました。
妊娠中、最も思い出深い出来事となったのは、小川山「エクセレントパワー」の完登でした。
「エクセレントパワー」は花崗岩のフリークライミングのルートで、日本初の5.13aといわれる歴史あるルート。40mもの長さがあり、その全長にわたって様々なテクニックを駆使する、とても内容の濃いルートなのです。
このルートに1ヶ月半もの間打ち込みました。最後は本格的な冬が目前となってしまい、岩は氷のように冷たくなって、手も足も凍りついてまともに登れない日もありましたし、冷たい強風の吹き荒ぶ日も、雪が降った日もありました。
今シーズン中の完登は難しいかも知れない…と思い始めたある日、待ち侘びた”その時”はやってきました。一度も落ちずに、岩のてっぺんへ到達した瞬間に込み上げてきた感動には、何か特別なものがありました。気づけば、まだほとんど膨らんでいないお腹に向かって「ありがとう」と呟いていました。
私はこれまで、登山やクライミングをライフワークとする人生を送ってきましたので、これからどんな妊娠生活を送るか、考えることも多かったように思います。
欧米では、妊娠前に行っていたレベルを超えない運動を、無理のない範囲で継続することには様々なメリットがあるという研究報告があり、経過が順調な妊婦には比較的積極的な運動を推奨しています。私もそうした情報を参考にしながら、山や岩を楽しむという自分らしい生活をなるべく継続しようと決めました。
そのおかげで、10ヶ月の間、元気に過ごすことができました。お腹が大きくなるにつれて、少しずつ身体が不自由になって、できることも限られてはいきましたが、その時々でちょうどいい目標を設定し、楽しむことができました。
“2人”での最後の冒険は、大好きな瑞牆山への一般登山道からの登頂。1人で登っていたこれまでなら、一般登山道からの瑞牆山への登頂には感動や達成感を感じられなかったかも知れません。そう思うと、この登頂もまた貴重な体験のひとつとなった気がします。
今後しばらくは、子供と一緒に楽しめるアクティビティを中心として活動することになると思います。次回以降の記事でも、その様子をお伝えしていきたいと思います!