mountain journal vol.28 西穂高岳〜ジャンダルム〜奥穂高岳

〈ridge(リッジ)〉と攻略する! 北ア最難関ルート・ジャンダルムへ
登山者にとって憧れの山、穂高連峰。
なかでも奥穂高岳の間は、難易度の高い上級者ルートとして知られ、
象徴的な岩峰・ジャンダルムをはじめとする難所がいくつも待ち構えています。
そんな穂高の核心部を2泊3日で踏破すべく〈ridge(リッジ)30〉で挑みました。
photo&text / kosuke kobayashi

02_DSC01797_

1日目は、新穂高温泉の駐車場に車を停め、ロープウェイ経由で西穂山荘へ。山頂駅から40分ほどでテント場に到着し、幕営。翌日に備え早々に就寝したのでした。起床は3時。パッキングを整え3時半に西穂高岳方面へと向かうと朝焼けが穂高の山々を照らしはじめていました。

03_DSC01809

5時目前で西穂独標に到達。ここから危険箇所が増えてくるので、明るくなるタイミングで先へと向かいます。

04_DSC01818

西穂独標を越え、振り返ると雲海の上に浮かんでいるような景色。太陽が出る前の幻想的な光のなか、岩場を進んでいきます。

05_DSC01824_

ここから西穂高岳、そして奥穂高岳へのルートはナイフリッジのある稜線。ハイマツをくぐるような道も。

06_DSC01858_

どんどん高度を上げていきます。西穂山荘方面の先には乗鞍岳、御嶽山も見えます。まるで雲海の上に浮かんでいるよう。

07_DSC01860

新穂高温泉方面には西穂高岳の影が伸びていました。昨日乗ってきたロープウェイも。

08_DSC01864_

6時頃、西穂高岳に登頂。ここから先は破線ルートとなり、一気に難易度が上がります。上級者向けのルートとなり、装備はもちろん、経験も必要。
先に進む前に、山行でセレクトした〈ridge(リッジ)30〉についてご紹介。〈ridge(リッジ)〉はカリマーのリュックサックのなかでも、定期的にモデルチェンジを繰り返してきたロングセラーのモデル。ハイキングからトレッキングまで、登山全般に対応する本格リュックサックです。
今回は、テクニカルなルートであることから、テント泊装備を携行しつつも、コンパクトにまとめるために30ℓモデルを使用。メインの食事を小屋に頼ることで調理器具を省くなどして、装備を厳選しました。これまでは30ℓモデルは小屋泊登山をターゲットにしていましたが、ギアの軽量化などもあり問題なくパッキングできました。

09a_DSC02447     

▲ヘルメットを着用し、頭を上に向けるようなシーンには〈ヘッドクリアランス〉が威力を発揮。ウェビングテープの調整により、雨蓋部分を後方に動かすことができるため、頭部の可動域を確保できます。

09b_DSC02442     

▲〈ハイドレーション〉も便利な機能のひとつ。落下などの危険もあるため、ボトルは携行せずにハイドレーションを使用。瞬時に水分補給できるのも魅力です。

10a_DSC02443     

▲〈ヒップベルトポケット〉には、行動食をイン。登攀や足元を確認しながらの下りもあるため、ポーチやサコッシュの使用はあまり推奨できず、ヒップベルトのポケットが便利。ちなみに高カロリーかつコンパクトな行動食が役に立ちました。

10b_DSC02439     

▲また、〈リッジ〉ならではのボトム形状は岩場での下りなどで大活躍。すっきりスリムな形状になっているため、下りの際岩とのひっかかりが少なく、行動しやすさだけでなく、安全面でもメリットがあります。

11a_DSC02450     

▲〈フロントポケット〉はヘルメットの携行のほか、ジャケットを使わないときに収納することも可能。とくに今回のように30ℓというコンパクトなリュックサックを選ぶときは、拡張性も大事。オプション的な装備の携行に役立ちます。

11b_DSC02460     

〈ridge(リッジ)〉シリーズは、30ℓと40ℓの容量が2型のほか、それぞれにS・M・Lの3つの背面長がラインナップ。体格に合わせて選ぶことができます。加えて、大きなムーブにも追従するバックシステムの安定感、岩場でも普段通り使える生地の耐摩耗性も特徴です。

12_DSC01884

登るだけでなく、下るシーンもたくさん出てきます。斜面側に体を向け、手を使って降りていきます。クサリが設けられている場所もありますが、安全はあくまで自分の手と足で確保するのが鉄則。

13_DSC01895_

間ノ岳が眼前に聳えます。遠くから眺めていると巨大な岩の塊のよう。奥穂高岳はまだまだ先です。

14_DSC01905

太陽が上がってくると日差しも体力を奪っていきます。日陰で行動食を食べ、水分も補給。体力を維持するのも大切です。

15_DSC01923

峻険な岩峰がいくつも立ちはだかるルート。どこを通ったらいいのかわからなくなりそうなのですが、しっかりと道とクサリがつけられているので間違えないように確認しながら進んでいきます。

16_DSC01927

難所として知られる逆層スラブ。急斜面を登っていくのですが、岩が手前側に出っ張っているのでまるで押し返されるような印象。雨が降るとスリップしやすくなるため、好天で岩がドライだったのは助かりました。

17_DSC01962

大きな岩がゴロゴロ…。ペンキで塗られた「○」「×」をたどって登っていくことも。

18_DSC01965

8時過ぎに天狗岩に登頂! ここでおおよそ行程の半分ほど。ただし、それは距離の話。ここからさらにアップダウンも激しくなり、距離あたりのコースタイムがかかってきます。

19_DSC01970

岩場の登り降りにも慣れてきますが慎重に。

20_DSC01974

足元ばかり気になりますが、頭上には「まさに夏山!」と言えそうな青空が広がっていました。

21_DSC01983

登りよりも降りに恐怖心を感じるシーンも。クライミングに慣れていても「下る」という動作はあまりなく、死角の足場を探すこともあるため、想像以上に緊張します。

22_DSC02003_

西穂高岳がだいぶ遠くに。写真左端には焼岳も遠望。

23_DSC02052

稜線上に飛び出した岩を越えていくのは高度感もあり、スリル満点。天候が悪く、風が吹いているような環境での山行は避けたいもの。好天に感謝するばかり。

24_DSC02065

間ノ岳山頂付近からは西穂高岳方面の稜線が一望。新穂高温泉方面からガスが上がってきますが、ちょうど稜線上で吹き返されていました。

25_DSC02082

そしてついにジャンダルムが登場。南側の稜線からはそれほど大きく見えず、小高い丘のよう。山頂に登山者が小さく見えます。

26_DSC02089

基本的にジャンダルムの登頂は同じルートを行き来するため、ここは荷物をデポして空身でピストン。浮石の多い急勾配のガレ場を登っていきます。

27_DSC02096

ついにジャンダルム制覇! 山頂は平たくなっているので休憩に最適ですが、撮影スポットでもあるので、長居しすぎないように。そして、その先には奥穂高岳をついに捕捉。

28_DSC02119

まだまだ難所はつづきます。むしろここからが本番といった感じで、不安定な足場も多くなってきます。

29_DSC02138

西穂高岳から奥穂高岳の間といえば、ジャンダルムがダントツに有名ですが、そのほかにもたくさんの難所がつづきます。チーム内でもとくに恐怖感があったのが「ロバの耳」の下りでした。手足を駆使したクライミングのムーブを使う場所や長いクサリを頼りに下るところなど、緊張感が絶えません。

30_DSC02145

さらにガレ場がつづきます。落石をしないように、慎重に。

31_DSC02183

ジャンダルムとロバの耳を振り返り、ひとやすみ。「いつかは…」と思っていた憧れのルートを越え、達成感もひとしお。奥穂高岳までもう少しのはずが…。

32_DSC02199

「あ、あれは…」

33_DSC02202

「行くんですよね…」

34_DSC02223

ホッとしたのもつかの間。目の前に立ちはだかるのは、稜線上に飛び出したナイフリッジ、通称・「馬の背」
。切り立った崖の下はガスで見えず…。少し風も出てきたので恐怖感はMAX。しかし手をかけやすく足場もしっかりしているので、無事クリアできました。

35_DSC02236

ここまで来ればもう安心。奥穂高岳への最後の登りです。

36_DSC02242

13時過ぎに奥穂高岳に登頂! 穂高岳山荘や前穂高岳方面からの登山者も多く、賑やかな山頂に胸をなでおろすのでした。

37_DSC02247

眼下には涸沢のカールが広がります。鮮やかなテントもちらほら。紅葉シーズンには数百張りものテントがひしめく人気キャンプサイトです。

39_DSC02279

13時ころ、穂高岳山荘のテント場にチェックイン。ちょうど荷揚げ日だったようで、ヘリコプターがなんども物資を運んでいました。

38_DSC02257

念願の昼食は小屋で。西穂山荘で食べられなかったラーメンをいただきました。今回はメインの食事を小屋にすることで軽量化を図っていました。賑やかな室内で1日を振り返りつつ、体を休めました。夜食までは、テントを張ったり、荷物を整理したり、涸沢岳に登ったりしてのんびり過ごすことに。早めに到着するのが安全の秘訣。「それにしても小屋の食事はうまいな〜」。

40_DSC02288

3日目となる最終日は下山ですが、その前に涸沢岳の山頂でご来光を待ちました。わずか15分ほどで登頂。ほとんど雲がなく、満天の星空のもと、ヘッドライトの明かりを頼りに登ります。

41_DSC02336

山頂からは北アルプスが一望できます。もちろん槍ヶ岳もくっきり。ここから見る槍ヶ岳は、どっしりとした山麓からピーク周辺のトンガリが繋がって見えるので迫力があります。

42_DSC02377

奥穂高岳、そしてジャンダルム〜西穂高岳方面も朝焼けに包まれていきます。ごつごつとした岩場を見ていると、昨日の山行が懐かしく感じます。

43_DSC02424

下山は白出沢を利用。1500mほどを一気に下り、林道を経て新穂高温泉へと戻ったのでした。
今回の山行の核心は、何と言っても2日目の長時間の岩稜帯歩き。ここに焦点を当てて携行する物の選択をしました。ポイントは機動性と快適性。背負うリュックサックは可能な限りコンパクトな容量で且つ安定性に優れるもの、ウェアはストレッチ機能と兼用性を重視しました。天候に恵まれ悪条件にはならなかったため、ウェアのポテンシャルは最大限に発揮できたわけではありませんが、3日間通しても大きなストレスを感じることなく快適に過ごすことができました。
ちなみにリュックサック重量は12kgほど。水を3.5ℓほど担いでいましたが、かなりコンパクトにおさめることができました。「テント泊装備を30ℓのリュックサックで」という制限の中で、ギアの取捨選択は大きなポイント。安全性を削ることなく、軽量性とコンパクトさを追求するのは、それ自体が面白い取り組みかもしれません。
最後に、使用したウェアをご紹介します。

44a_DSC02389
44b_DSC02392

boma NS jkt
必携のレインウェアとしてセレクト。雨が降らなかったため、ウィンドシェルやソフトシェルとして使用しました。ポケットが充実しており、腕上げ、上半身のねじりなどに追従するストレッチ性はダイナミックな動きのある山行で活躍します。

45a_DSC02397
45b_DSC02401

trail fleece jkt(women)
雨に濡れても、汗をかいても、保温力を維持してくれるフリースを防寒着にセレクト。夏場でも冷え込む高所では必携のアイテムです。冬場はインシュレーションとして活躍していましたが、今回はアウターとして、日没後に着用。ハンドウォーマーポケットは暖かく、日の出を待ち冷えてしまった手を温めてくれました。

46a_DSC02406     

delta S/S
スムーズな腕上げを可能にするストレッチ、激しく動いた後も体温調整機能により快適性が持続する吸水速乾生地が魅力。日差しと暑さで発汗するため、高機能インナーはマストアイテムです。

46b_DSC02409     

comfy convertible pants
岩場での足上げにしっかりと追従する4wayストレッチ、行動中の小物の出し入れに便利なカーゴポケット、しかもコンバーチブルタイプのパンツ。脚部を大きく動かすこともあるため、伸縮性のあるパンツがオススメ。

47a_DSC02416     

▲アウター:logo T vol1 (woman)
速乾性のあるprimeflex生地を採用したTシャツ。UPF50+のUVカットモデルのため、夏の登山の日焼け対策に最適です。
▲インナー:fieldsensor L/S (woman)
Tシャツの下には、汗を大量にかいても、乾きの早いインナーを着用。不快感がほとんどなく、常にさらっとした着心地のロングスリーブモデルです。UVカットタイプ。

47b_DSC02418     

fieldsensor S/S
大量の汗をかく長い樹林帯やアプローチでも高い速乾性でベタ付きを軽減してくれました。

48_DSC02232

今回の西穂高岳〜ジャンダルム〜奥穂高岳への山行は、テント泊を基本にしつつも、小屋での食事やサービスをプランに入れました。ひとつは水。稜線上は水場がないため、コンパクトなパッキングでは3日分の水を担ぐのは現実的ではありません。そこで2日目のスタート時に不足していた水を西穂山荘で購入(1ℓ200円)し、穂高岳山荘到着時に当日の夜と翌日の下山分をいただきました(テント泊、小屋泊は無料)。
また、幕営ギアも軽量化していたため、天候が悪い時などは小屋泊も視野に入れていました。軽量化する場合はどうしても対応力が落ちるため、カバーするプランを検討しておくことが重要です。なお、西穂高岳〜奥穂高岳は難易度の高い“破線ルート”。山行経験はもちろん、レインウェアや防寒着だけでなく、グローブやヘルメット、ファーストエイドキットといった必携品も確認して挑んでください。

karrimor mountain journal

クリップボードにコピーしました
  • karrimor mountain journal

    Mountain Journal vol.30〈ultimate〉シリーズで挑む、晩秋の外岩クライミング

    2019.12.02

  • karrimor mountain journal

    Mountain Journal vol.29 ランクス28とデール28で登る、紅葉の仙丈ヶ岳

    2019.10.16

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.27 新型クーガーと登る常念岳(北アルプス南部)

    2019.07.26

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.25 八ヶ岳デイハイク(茶臼山〜縞枯山〜雨池)

    2018.10.16

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.24 立山〜剱岳(DAY2)

    2018.09.20

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.24 立山〜剱岳(DAY1)

    2018.09.13

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.23 爺ヶ岳〜針ノ木縦走(DAY3)

    2018.09.01

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.23 爺ヶ岳〜針ノ木縦走(DAY2)

    2018.08.23

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.22 日光白根山

    2018.06.18

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.21 金峰山

    2018.05.24

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.19 八島湿原

    2018.01.25

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.18 安達太良山

    2017.10.24

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.16 千葉房総

    2017.08.09

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.15 読図@鎌倉 / with SL20

    2017.05.24

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.13 槍ヶ岳(前編)

    2016.11.17

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.11 キナバル山(後編)

    2016.08.18

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.11 キナバル山(前編)

    2016.07.27

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.9 雲取山

    2016.04.01

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.7 軽井沢

    2016.01.28

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.3 西伊豆

    2015.09.17

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.2 木曽駒ケ岳

    2015.08.21

  • karrimor mountain journal

    karrimor mountain journal vol.1 尾瀬

    2015.07.17