自然が好きな人なら誰でも知っている世界自然遺産の屋久島。一度は行ってもみたいと思っている人も多いはずです。ただ南の島である屋久島の冬の姿は意外と知られていません。今回の『+karrimor』は冬の屋久島で、屋久島でガイド業を営むGREEN MOUNTの加藤朗史さんと〈白谷雲水峡〉を歩いてみました。
朝5時、白谷雲水峡の入り口から歩きだす。屋久杉をヘッドライトで照らす加藤さん。「屋久島は森が深く道迷いが多いんです。朝暗いうちから歩く場合や初めての登山者は屋久島のトレッキングルートを良く知るガイドと歩くことをオススメします!」。
白谷雲水峡の入り口から太鼓岩までの距離は約2.5km(往復5km:楠川歩道を使ったベーシックな場合)です。時間は4時間〜5時間ぐらいで往復できますが、ガイドと歩くと6〜7時間程度かけ、自然解説、昼食、おやつの時間を入れてゆっくり歩いて行きます。
暗いうちに白谷雲水峡の一番奥の太鼓岩(1050m)まで歩き、待っているとだんだん明るくなってきました。朝日が上がってきて、顔に朝日が当たり始めます。「南の島とはいえ太鼓岩の気温はマイナス5℃。朝日がうれしいですね」と加藤さん。
屋久島、最高峰の宮之浦岳(1936m)に朝日があたりはじめ、南の島とは思えない風景が目の前に広がります。宮之浦岳山頂では、厳冬期ではマイナス15℃、雪は3m近く降り積もります。
太鼓岩から降り始めると、名もなき屋久杉がありました。「1000年以上生きている杉のことを屋久杉と呼びます。長年生きた屋久杉には畏敬の念を感じますね」。
辻峠(960m)まで戻ってきて休憩。辻峠は太鼓岩、白谷雲水峡入り口、トロッコ道、などの分かれになっているところで、縦走する登山者は辻峠でよく休憩します。加藤さんの友達が焙煎したコーヒーで体が温まりました。
「GREEN MOUNTは2013年から人と自然をつなげていくことがしたくて、事業を始めました。成長続ける現代社会の中で、気を許してほっと自分の心の居場所を確認できる場所として利用してもらえると嬉しいです」。
ツアーの中でも「お任せプラン」と言った、その日のコンディションに合わせて組み立てて行くオリジナルプランも年々人気があるとのこと。
「決められている目的地に行くプランもありますが、どちらかというと僕は目的地よりそのプロセスを楽しんでいただけるようなプランが得意です」。
今回も九州の南部に位置する温暖なイメージの屋久島にも、雪が降り積もることを体験させてもらいました。
さらに標高を下げて行き800mぐらいまで歩いて行くと、もう雪はなくなり屋久島らしいコケの世界。癒される空間です。「登山口から1時間も、いや30分歩くだけでコケの世界にひたれるのは屋久島の魅力です。凄い島です」。
最近はコケをゆっくり立ち止まって見るトレッキングスタイルも定番になってきました。「屋久島にきたらコケを素手でさわってほしい」と加藤さんは話してくれました。北八ヶ岳や奥入瀬など日本はコケが豊かです。
石組みの道をおりていくと白谷雲水峡の入り口はもう近くなってきます。江戸時代につくられた道です。入り口付近は整備されているので子供から年配の方までトレッキングを楽しめます。
白谷雲水峡をあとにし、麓におりると気温がすっかり変わります。1月下旬なのに屋久島は花がたくさん咲いています。ちょうど見頃なのがカンヒザクラでした。寒かった太鼓岩を忘れるかの陽気でした。
「冬の屋久島の魅力は、気温の差を利用して過ごすことができるところ。晴れていれば薄手の長袖ぐらいでちょうど良いぐらいですが、標高を上げていくとどんどんと気温が変わり、景色も移り変わっていきます。それを1日で体験できるんです。前岳(里から見える山)は雪が少ないので山歩きが楽しめますが、奥岳には雪が降っているので白銀の世界を味わうこともできますよ」。
加藤さんが使ったリュックサックは〈alpiniste45+10〉。リュックの構造上ややすそ広がりにできており、上半身が傾いてもバランスが取りやすく歩きやすいのだとか。ヒップベルトもフィット感がよく、荷物の重さをしっかりと分散してくれるから楽と話してくれました。
リュックサックにはガイドならではの装備がいっぱい。「ファーストエイドキッド+スワミベルト、スリング、カラビナ、ツウェルト、フライシート、コッフェル、バナー、コップ(人数分)、ナイフ(ノコギリ付きの小さなタイプ)、ヘッドライト、ノートとペン、500ml×2(飲用と怪我の処置用)、レインウェアー、カメラバック(カメラ本体、レンズ)、トイレットペーパー、ビニール袋、小タオル、お客さま用(ヘッドライト予備、ネックウォーマー、ウルトラダウンパーカー、携帯トイレ)などですね」。
「背中に軽いアルミフレームが入っているおかげで、雨の多い屋久島の場合、急いでパッキングする時でも荷物がしっかりと固定され背負いやすかったですね」。
「冬の屋久島を歩いて、北海道から沖縄までの気候帯を持つ屋久島の奥深さを再認識しました。巨木の森だけのイメージではなく、まわりの素晴らしい環境がその巨木を生み出していることが伝わると嬉しいです」と加藤さん。
SUPで安房川をゆっくり水上散歩。「雪解け水ですが、ウェットスーツ、ブーツを着ればSUPを楽しめます。水の透明度が高く、底まで透き通って見られるところも、この島の魅力の一つです。里からエントリーしてしばらく漕いで進んでいくと、森の中に入って行きます。際立った岩盤にしがみつくように生えている木々がとても綺麗ですよ」。
屋久島の里の森はほとんどが常緑樹。冬でも、もこもこブロッコリーのように生えているので、綺麗なのだとか。
天候は晴れ。気温は16℃ですが、水温はわずか5〜6℃ほど。「川の水は雪解け水ですので、冷たいですが、天気が晴れていてウェットスーツ、ブーツがあればポカポカした感じで楽しめました」。ちなみに海水温は20℃前後あり、観光客の方がダイビングをしているよう。
言わずと知れた「縄文杉」屋久島で最も観光客が多く、日本で一番大きな巨木そして長寿の木に会いたい」と、屋久島では一番人気のコースです。「縄文杉」は昭和41年(1966年)に発見された杉の巨木です。森の奥地に生育しているので、会いに行くのに片道10.7km(往復21.4km)の道のりを歩いて行きます。
屋久島に生育するヤクザル。ニホンザルの亜種。体が小さく、毛の長いのが特徴です。
雨が多い屋久島の風土に合わせて変種したよう。
洋上のアルプスと言われた屋久島のピーク「宮之浦岳」は、標高1936mで、九州で一番高い山としても有名です。天気の良い日に山頂に立つと360度の大パノラマが最高です。宮之浦岳までの道のりには、トーフ岩や日本最南端に位置する高層湿原の花ノ江河など見所満載です。
千尋の滝(せんぴろの滝)。左に見える巨大な岩盤は、屋久島を形成している花崗岩。まるで千人が手を結んだくらいの大きさということで名付けられているようです。滝の落差は約60mもあり、雨が降ると大量の水が流れ落ちる屋久島を代表する滝の一つです。
Photo by Kenji Koga
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[ alpiniste 45+10 ]
カリマーが誇るリュックサックのラインナップのなかでも、ひときわアルパインに特化したモデル。ハーネスの着用を考慮したヒップベルト形状やアックスの携行を意図した専用ホルダー、アイゼンなどの小物の収納に便利なフロントポケットなど、冬季登山といったテクニカルなシーンで活躍する機能がふんだんに盛り込まれています。耐久性の高いシルヴァガードファブリックは岩や氷などのスレにも強いのが特徴です。-
ポイント
- バックパネルには、汗などを速やかに吸収・拡散可能なスーパークールメッシュを採用
- 専用設計の背面構造
- デタッチャブルヒップベルト
今回のおすすめアイテム
alpiniste 45+10
加藤朗史(GREEN MOUNT)
明日が広がる「ashigaru」がプロデュースする、屋久島のフィールドをベースとした自然体験型ガイド〈GREEN MOUNT〉代表。屋久島のフィールドを使って、自由に非日常をプロデュースしています。自然の中でいつもと違った時間を過ごすことで、自然と共に生きていくことの大切さを伝えていきたいと思ってます。山と川と海、そして里を遊び尽くす様々なプログラムを多数用意してます。
〒891-4404 鹿児島県熊毛郡屋久島町原914-4
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