karrimor mountain journal vol.11 キナバル山(前編)

取材協力=サバ州観光局(マレーシア・ボルネオ・サバ州)
「最高峰」という響き、いいですよね。言わずもがな、本物の最高峰はエベレスト(8848m ネパール)なわけですが、世界中にはいろんな「最高峰」があります。日本だったら富士山がそれ。3776mの日本のシンボルともいえる山です。ほかには、デナリ(6194m アメリカ)、エルブルス山(5642m ロシア連邦)、アコンカグア(6959m アルゼンチン)などなど、「7大陸最高峰」と呼ばれるものもあります。
前置きが少し長くなりましたが、今回の〈Mountain Journal〉でご紹介するのは東南アジアの最高峰、キナバル山(4095m)です。なんと、マレーシアはボルネオ島、サバ州にあるキナバル山まで、はるばるやってきてしまいました。ついに〈Mountain Journal〉初の海外企画なのです。

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登山口、の前にまずはボルネオ島に行かねばなりません。ということで成田空港へ。アクセスは大きく分けて、クアラルンプール経由でのコタキナバル、もしくはマレーシア航空が運航してるコタキナバル直航便の2つ。直航便は週に2本(2016年5月現在)。ちなみにクルーは前者のクアラルンプール経由で向かいました。

今回の荷物は写真のとおり。〈clamshell 40〉には着替えとアウトドアウェア、〈trim 20〉にはパソコンや書類、撮影機材など。〈VT hip bag B〉はパスポートや貴重品、携帯電話など肌身離さず持っていたいものを入れました。最高峰を登る割にはコンパクトな印象ですが、実際コンパクトでした。というのも4000m峰とはいえ熱帯。それほど防寒系のアイテムも多くありませんし、素敵な山小屋に泊まれるのでキャンプ用品などは不要なのも荷物が少ない理由。

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10時30分成田発の飛行機に乗り、クアラルンプールで乗り継ぎ、コタキナバルに着いたのは夜の21時。オレンジの街灯と行き交うクルマ、熱帯アジアの空気に気持ちが高ぶりますが、フライトの疲れもありとりあえずホテルへ。本当は少し街に出たかったのですが、実はキナバル山の登山は明日なのです。

翌朝7時にコタキナバルから一路キナバル山へ。キナバル山まではおよそ2時間ほどと近く、街を抜けて山道を走るとあっという間にその姿を拝むことができます。これから登るキナバル山ですが、地元の民族であるドゥスン族にとっては、古くから祖先の魂が宿る霊峰。しかも世界遺産なんです。富士山とも共通するところがあるなと思いつつも、その山容はなかなかに迫力があると感動。

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キナバル山は1日の入山人数が130人と決まっています。それは途中で宿泊する山小屋のキャパなのだそうですが、世界遺産でもあるのでしっかりと管理されているから。基本的にガイドが同行するツアーに申し込むような形になります。ということでまずはキナバル公園のオフィスでパスを受け取ります。
欧米からのハイカーもちらほらというかかなり多め。ボルネオ島は東南アジアでも有数の旅行先。バックパッカーはもちろん、リゾートとしても人気があります。とくに豊かな自然は大きな魅力です。

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キナバル登山の行程をざっくり説明すると、1日目はティンポホン登山ゲート(1890m)からラバン・ラタ(3300m)という山小屋まで約6kmほど登り宿泊。翌早朝に2km先の山頂を目指し、一気に下山するというもの。距離は短いですがなかなかの標高差を登らねばなりません。はじめの4kmほどは樹林帯。鬱蒼とした熱帯雨林を歩いていきます。

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そこかしこに動物の気配。聞きなれない鳥の鳴き声に耳を澄ませたり、ガサゴソという音に茂みを覗いてみると野生のリスの姿が。高山らしく、キナバルシャクナゲという固有種も見ることができました。

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ラバン・ラタまでの登山道には休憩所が7つ。疲れたらゆっくりと休むこともできるので登山ビギナーにもやさしい配慮。この日は強烈なスコールがあり、そんなときにはちょうどいい雨宿り小屋となりました。

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ゆる〜っと登っていくと駆け足で下りてくる集団が。彼らは山小屋などで必要な資材や物資を人力で担ぎ上げている歩荷さんでした。野性味あふれるというか屈強そうというか。足元はサンダルでしたけど。

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標高が3000mに近づいてくるとボルネオの象徴のひとつともいえるウツボカズラ(ネペンテス)のエリア。これはまだまだ小ぶり。500mlのペットボトルくらいの大きさまで育つものもあるのだそう。しかし吸い込まれそうな禍々しい造形がかっこいい。

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ついに樹林帯を越え、キナバル山のごっつい山容が目の前に広がりました。途中土砂降りにも見舞われましたが、晴れ間も見えてきて一安心。ラバン・ラタまであとちょっと。

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実を言うと3000mあたりから高山病の兆しがあり、這々の態でラバン・ラタに到着。わずか4kmほどの工程ですが、雨宿りなんかもしていたので7時間もかかりました。レストランでは登山客たちが夕食を囲んで談笑。ビュッフェ形式だったのであれもこれも食べたかったけれどやっぱり調子が悪い…。

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グロッキーになりながらも、窓の外には素晴らしい夕焼けが。熱帯らしいダイナミックな雲と眼下の雨林。そして刻一刻と変化するグラデーション。少しばかり気持ちが楽になりました。

綺麗な瞬間はほんのひととき。明日のアタックが心配なのでそそくさと就寝します。ちなみにほとんどの人は高山病にはかからないと思いますのでご安心を。アタックスタートは午前2時。そのためには1時半には起きなければなりません…。体調の回復を願ってベッドにもぐりこみました。う〜む、無事キナバル山頂の様子をお届けできるのでしょうか…。後編をお楽しみに!


yahho

ヤッホー

性別:男性
登山歴:10年
趣味:テントを使わないグランピング

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