自分らしく旅を愉しんでいる女性たちに、こだわりの持ち物を見せてもらおう!という新連載。
第1回目は、天然素材を使ったユニークな作品で知られる木工アーティスト、しみずまゆこさん。
山へ行くときに欠かせない、思い入れのある道具を見せていただきました。
※この記事は、旅と暮らしをつなぐ雑誌『BiRD』で連載中の拡大版です
photo NOZOMI KATO
text BiRD
しみずまゆこさん(木工アーティスト)
幼少時と変わらない“自然と繋がっていたい”感覚
「パッキング風景を見せてください!」そう言ってお邪魔したしみずさん宅は、落ち着いた住宅街にあるマンションの一室。それが、なかへ入ると、味のある木材が張り巡らされた床や壁に、ドライフラワーや枯れ枝などがオブジェのように溶け込み、どこかログハウスのような雰囲気。
「その時々の好きなものをビスで留められるように、壁には白い板を張っています。殺風景なコンクリートが苦手で、植物や木工品など、自然を感じられるものを飾ることが多いです。地元が笠間焼の盛んな場所で、親が焼き物をやっていたんです。その影響か、貝殻に紐をつけてペンダントにしたり、クリスマスには木の実や枝でリースを作ったり、家の裏山や海で集めたものを使いって様々なものを作って遊んでいました。今やっていることって、当時の工作の延長なのかもしれません(笑)」
作品制作に加えて、塗装や木の小物の製作を生業にしているしみずさん。生まれ育ったのは茨城の山間部で、その影響か今も国内外の山を歩くのが好きといいます。「昔からマウンテンバイクに乗るのが好きでした。今は、夏場のスキー場をリフトで登って自転車で下る、という専用コースが整備されてきましたが、以前はあまりなくて。自転車を押しながら登山道を登っていたんです。また、スノーボードのバックカントリーにも興味があったので、どちらも山を登る必要があり、そのトレーニングを兼ねて山へ行くようになりました。ですので、今もピークハントではなく、ゆるやかな尾根などを長時間歩くのが好きです」
山で集めた“とるに足りないもの”が作品に
そんなしみずさんの山行は、低山・日帰りがキホン。山に持って行く必須アイテムを伺います。
「山道具は気に入ったものと長く付き合うタイプで、頻繁に買い足したりしません。荷物は少なめなので、ザックは夏場なら20〜30ℓあれば十分です。休憩中に羽織るフリースやレインウェアはもちろんですが、趣味道具として、スケッチブックにチェキ、コンパクトフィルムカメラ、そしてマスキングテープは必ず持っていきますね。道中で気になったものを収集し記録するのに使います。これらを取り出すことが多いので、細かいポケットがたくさんついているものを選びます」
尾瀬に八ヶ岳、八幡平(岩手)、久住山(福岡)、海外ならネパール、アラスカ、ポートランド……。旅をともにしたスケッチブックには、バスやゴンドラのチケット、枯れ葉や小さな木の実、チェキで撮影した写真、何かの包み紙、正体不明の布切れなど、あらゆるものがジャンルレスに留められている。そこに漂うのは、普通の日記とは違う、その時々の空気みたいなもの。
「もともと性格が忘れっぽく、マメでないので、旅の感情や出来事など忘れがちなことを、記録として残しておきたいなとはじめたのがきかっけです。旅の間、心にとまったものを強力なマスキングテープでざっくり貼り、覚え書き程度のメモをつけます。楽しく簡単にできるから、つづけられるのかもしれません」そんな旅のスケッチブックは、今ではしみずさんの作品のひとつ。個展などで展示する機会も多いです。
「幼い頃から、道端に落ちているものをいろいろ拾ってしまうクセがあるのですが(笑)、たとえば、何かが自分の心にとまって拾い上げた石も、他人からしたら“ただの石ころ”になってしまう。そんなガラクタともいえる“とるに足りないもの”に込められた物語を、多くの人に感じてもらえたらと思い、いつしか作品になっていきました。ときには、木工作品のアイディアになることもあります」
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旅の持ち物
スケッチブック/マルマンのスケッチブックの横長タイプは国内旅行用に。カメラ/友人の野川かさねさんにもらったリコーGRのコンパクトフィルムカメラ。広く景色が撮れるのがお気に入りで、4〜5年愛用している。
図鑑/葉っぱのカタチから樹木が判別できる林将之さんの植物図鑑。紅葉バージョンと両方持っている。
マスキングテープ/塗装の仕事でも使う粘着力の強いもの。
チェキ/国立公園など物を拾ってはいけない場合に活躍。これで撮影した写真をスケッチブックに貼付けていけば、採集した気分に。
マグ/サーモマグはどこへ行くにも持ち歩いている。冬はホットのコーヒーや紅茶が定番。
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今回のおすすめアイテム
tatra 20
[ タトラ 20 ]
装備充実のトップローダー。パッド入りヒップベルトにはポケットを装備し、行動中も物が取り出しやすい。大き目のワンドポケット、フロントポケットなどライトトレッキング用には贅沢な装備が満載。
ポイント- パッド入りヒップベルトで疲れ知らず
- ライトトレッキングを快適にする充実のポケット
- 上部から雨の侵入を防ぐ雨蓋仕様
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しみずまゆこ
「Chip the Paint」の名で活動する木工アーティスト。古材や自然のなかにあるものを使い、オブジェやコラージュ作品を制作。山と自然のあれこれをテーマにした女性4人のユニット「noyama」のメンバーとしても活動中で、『NATURE LESSON BOOK』(文藝春秋)が発売中。夫婦で文字をテーマにしたショップ「LETTERS 8」も運営。
http://www.chipthepaint.com/
http://noyama.jp/
http://letters8.com/