山とからだ vol.3「骨盤」後篇

今日、様々な山行スタイルが確立し、あらゆるギアが開発されています。カリマーは製品をつうじて、登山時の疲労や負担をいかに軽減できるかを軸に日々研究、商品開発を行っています。
『karrimor WANDER LABO:山とからだ』では、本来、体とはどのように動く仕組みなのか、どのように動かせば効率的なのかといった、人体の観点から登山時の疲労軽減に役立つスキルを紹介して行く企画です。
前回のテーマ、第2回〈骨盤:前篇〉では、骨盤の正しい位置を知り、良い姿勢を作り出すことを中心にお話しをしました。今回の〈骨盤:後篇〉では、関節を中心とした動きの中での骨盤にフォーカス。フランクリンメソッド・エジュケーターの吉倉さんとともに紐解いていきます。

骨盤って関節が5つもあるの!?

前篇でもご紹介した通り、骨盤は1つの骨ではなくいくつかの骨の集合。つまりは、骨と骨の間に関節があるということなのですが、実際、骨盤に関節があること自体を、ご存知の方はとても少ないと思います。なんと、骨盤内には5つもの関節が存在しているんです。恥骨結合関節(恥骨の間には線維軟骨性の恥骨結合があり、右の寛骨と恥骨結合、左の寛骨と恥骨結合の計2つ)、腸骨と仙骨を結ぶ関節が2箇所、そして仙骨と尾骨の関節が1箇所です。※下記図参照
と、いっても本当の関節は仙腸関節のみ、他は動きがほとんどありませんが動かない訳ではありませんので関節としてイメージしてみてください。

関節 最新

骨盤内が動く理由とは。

では、なぜ骨盤内が動くようにデザインされているのでしょうか?
それは、地面からの衝撃(力)(例えば、ジャンプし着地した時の地面から、硬いアスファルトを走った時)と、上からの衝撃(力)(例えば、荷物を持つ時)に適応しなくてはならない場所だからです。衝撃を吸収したいところに関節はあり、バネのように力の吸収がないと動くことができないので、その動きをサポートする役割をしています。

骨盤の関節が動くことを知っていると、登山のときにどんな役にたつの?

骨盤の関節が動くことを知っていることで得られる利点についてお話ししたいと思います。前述のとおり関節はバネのような動きができるようになっています。柔軟性がないと背骨と脚の動きがかなり制限されてしまい衝撃が吸収できず、骨盤にきついコルセットを巻いて歩いているような、まるでロボットのような歩き方になってしまいます。そこで、自由に動くことを知れば、自然と可動域が広くなるのです。
骨盤の関節を意識することは、カリマーのヒップベルトの着用位置にも大きく関係があります。カリマーのリュックサックは、腰骨の上部を包み込むように締めることを推進しているのですが、下の方に締めすぎると、関節の可動域の妨げになってしまいます。そのため、より上の位置を促しているんです。
また、骨盤の中で最も動くイメージの少ない〈仙腸関節〉は10代まではかなり柔軟性が残っていますが、歳を重ねると硬くなってしまうことがある部位でもあります。動く場所であると認識していること、しっかりと動かすことによって防ぐことができるので、後半でご紹介するエクササイズを是非、日常に取り入れてみてください。

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良い歩き方と、悪い歩き方。

では、歩く時、機能的な骨盤はどのように動くでしょうか?まずは、仙骨は背骨の延長線上にあり背骨の一部だと言えます。そして、寛骨は脚、股関節の延長線上にありますので、脚の一部だとイメージしましょう。
※骨盤のパーツをおさらいする方はこちら第2回〈骨盤:前篇〉の一枚目をご参照ください!
良い歩き方
・左足を前出すとき、左の寛骨が後ろに傾きます。
・寛骨が後ろに傾くことによって股関節の前側が開き脚が前に出やすくなります。仙腸関節が動くことによって仙骨、寛骨の動きが相殺され見た目には骨盤が安定しているように見えるでしょう。
悪い歩き方
・ 左足を前に出す時、左の寛骨だけではなく仙骨も一緒に後ろに傾きます。
・骨盤全体が後ろに倒れ、仙腸関節の動きがなく腰が丸くなります。

より良い動きはバランスが肝!

仙骨が身体の中心にあり左右の寛骨がバランスよく動くこと、柔軟に力の吸収を行っているところをイメージします。左右のバランスが悪いと、腰や股関節、筋肉にも差が出ることで、疲労や負担の原因になります。


普段のトレーニング

1つ目のトレーニングは、前篇でご紹介した〈骨盤の運動〉です。効果的でとても大切な動きなので、後篇でもう一度おさらいをしたいと思います。※図1
また、この動きと組み合わせてもう1つのトレーニングをご紹介しようと思います。パッと見、スクワットに見える動きですが、いわゆるお相撲さんが土俵でやるしこふみと同じイメージです。※図2

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①仙骨の探し方
骨盤の後ろに手を当て、中指がお尻の割れ目に来るようにする→同時に手首を腰の位置に合わせる→手の平に仙骨が包まれた状態です。
②動き
ニュートラル姿勢から骨盤を前傾、後傾を交互に行い、仙骨をよく動かします。力でなく、痛みや違和感を感じない程度に気持ちよく動かしましょう。20〜30回を1セットとし、1日2セットほど行えばOK。

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①姿勢
足を肩幅に開き、骨盤の位置はニュートラルにします。ポイントは、つま先と膝は同じ方向、体の外向きに。
②動き
膝に負担がかからない程度に膝を曲げます。その際お尻がしまってくる感覚があると、骨盤が後傾し仙腸関節や骨盤底筋が硬くなります。 必ずニュートラルのまま、骨盤が後傾しないように意識します。お尻の穴が開いてくる感覚が出てくると骨盤内の関節が柔軟になってきます。トレーニングの目安は、1日10回2~3セット行うと良いでしょう。

日常の”歩く”という当たり前の動作が、有効なエクササイズになれば、登山の時もたくさん歩いても楽しくなると思います。大股で歩いてみることで仙腸関節がより柔軟になり、骨盤底筋が前後に伸びたり戻っりするエクササイズも有効ですよ。


骨盤について、〈前篇〉では、正しい位置にあること、重心が仙骨にあること、これが良い姿勢を作り出すというお話しをしました。そして、〈後篇〉では骨盤には関節があり、正しい使い方を知ることで、効果的に動かすことが出来るというお話しをしました。
人の身体の上半身と下半身をつなぐ大切な部分である骨盤。カリマーのリュックサック開発の概念も、体の構造力学を元にした考えのもと作られています。カリマーの概念で作られたリュックサックを、身体の内側の仕組みや正しい体の使い方を知ることで、より快適な山行、そして負担の少ない登山になると考えています。

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吉倉あい(よしくら・あい)

ピラティスインストラクター、フランクリンメソッドエジュケーター。
1979年生まれ、北海道出身。年齢、性別、運動レベルにとらわれず幅広く指導。人間本来の機能的な身体、機能的な動きに着目し日々探求している。

karrimor WONDER LABO

カリマーのプロダクトのどれもが、明確な用途や目的を持って作られています。ブランド名の語源「carry more=もっと運べる」は、未知の領域だった山へと踏み入っていくために必要な荷物を過不足なく運ぶことが、いかに重要な要素だったかを物語っています。ここでは、プロダクトひとつひとつをじっくり余すことなく「解剖」し、「検証」していきます。

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