家で過ごす時間が増え、遊び方や働き方にも新しい価値観が見出されはじめています。たしかに、オンラインで旅の疑似体験をすることは不可能ではありませんが、やはり野外で過ごす気ままな時間は例えようもなく尊いものです。それを今改めて痛感しています。
私は、大学4年ではじめて北アルプスに行くまではどちらかというとインドア派でした。それがあっという間に登山好きになり、より素晴らしい景色が見たい一心であらゆるアウトドアアクティビティに興じました。なかでも”焚き火”は、そのかなり初期のころから常に私のアウトドアライフと共にありました。
寒い季節には死活問題ともなりうる、火の存在。暖をとることや調理などに活用されるのはもちろんのこと、”焚き火”の醍醐味は人の精神性にも通じます。”焚き火大全”という本には火と人の歴史が綴られており、「火を焚くのは人間であることの証明」とも記されています。赤々とあたりを照らすいい感じに育った熾火をただ眺めているだけで、何時間でも語り合えるのです。
世界中どこへ行っても、アウトドアに興じる人々の焚き火好きは変わりません。ヨセミテのキャンプ4など、北米の国立公園には大抵”fire circle”があって、そこで直火の焚き火が出来ます。キャンプ4ではいくつかのパーティで火を共有していました。寒い朝などは、誰かが先に火をおこしてくれていると、とてもありがたいものでした。
焚き火で豪快に肉を焼くのも大好きなことのひとつです。難しいことを考える必要はありません。ある程度炎が落ち着いて炭の育った焚き火に、愛情込めて肉の塊をかざします。食べてみてもし生焼けなら、小さく切って串に刺して焼き直せばいいのです。
燻製器など使わなくても、肉を吊るして焦げない程度に放置しておけば、
勝手に美味しいスモーク肉が出来上がる・・・こともあります(笑)。
日本国内にも、直火OKなキャンプ場は割とあります。キャンプ専門誌などを見ると、直火OKかどうかというパラメータがあって簡単に調べられます。林間のキャンプ場なら、焚き木を集める作業もまた楽しみの一つです。針葉樹より広葉樹がいいとか、コツは色々あるようですが、やはり難しいことは考えません。そのうちに何となく、わかるようになってきます(笑)。
焚き火の話からは少し逸れますが、私は(主に国内の)キャンプのとき、ほぼテントを張りません。眠くなるまで焚き火の側にいて、もう耐えられないくらいになったらその場にマットを敷き横になります。そうやって火を見ながらいつの間にか寝てしまい、夜中に目が醒めると満天の星空の下にいます。翌朝は、鳥がさえずり、あたりが明るくなると同時に目覚めます。せっかくの”アウトドア”なのだから、テントの中で寝るのはもったいないと思っています。
そして焚き火といえば、やはり一番素敵なのは”沢登り”です。
泊まりの沢に行き、途中のビバーク地で流木を拾っておこす火はまた格別です。たいていは、ウェットスーツを干して焚き火の熱で乾かします。火がないと寒くて眠れず、夜中も目を覚まして火を絶やさないようにしたりします。乾燥しきったヨセミテと比べると、そもそも焚き木が湿っている沢中の焚き火は少し難易度が上がりますが、それゆえに火をおこす楽しさも倍増します。
釣果があれば、イワナの塩焼きでディナーは一気にゴージャスに。誰にも気兼ねせず、世界と切り離された空間で炎を満喫できるロマンチックな一夜です。
ここ最近は、自宅に設置した小型のクライミングウォールでせっせとトレーニングをしたり、自宅の屋上でギターを弾いたりして、外に行けない時間の穴埋めをしていました。
これから先、こうした生活がずっと続く可能性もゼロではありませんが、悲観する必要はありません。与えられた環境下で大好きなアウトドアアクティビティをいかに継続していくか。その道を模索することは今に始まったことではなく、先人たちの時代からずっと行われ、受け継がれてきた精神です。
人に、社会に、環境に配慮して、限られた資源を大切にしながら遊ばせていただく。その基本は常に変わりません。
あ、そうそう、最後に大切なことを付け加えておきます。焚き火の際は、火の粉で大切な(カリマーの)ウエアに穴があかないよう、デニム地などの”焚き火ウエア”を着て保護することをオススメします。