大堂海岸クライミングツアー〜太平洋をのぞむトラッドクライミングと子連れキャンプ旅〜【アンバサダー 稲田千秋】

前回の記事では高知県のボルダリングをご紹介しました。あれから3ヶ月、今度は友人家族と連れ立って、大人4人+赤ちゃん2人で高知県を再訪です。以前から気になっていたクラッククライミングの一大エリアである、大堂海岸にやってきました!

大堂海岸は、高知県の南西の端にある海食崖の岩場です。前回訪れた桂浜から更に150km以上西に位置しており、とっても遠いです。東京からなら車で12時間ほどかかります。

しかも、どのエリアもアプローチが危険だったり懸垂下降が必要だったりするので、基本的に子供と一緒に行ける場所ではありません。しかし、今回は2家族でお留守番とクライミングを代わりばんこするという作戦により、夢の「子連れ」大堂海岸ツアーが実現しました!

大堂海岸は、観光資源豊富な高知県の景勝地のひとつでもあります。高さ100m級の花崗岩の断崖が、十数キロにわたってそそり立っており、晴れた日は青い海と白い岩のコントラストがとても美しい場所です。そして、終了点を含めて残置物はほぼゼロ!きわめてナチュラルなクライミングを満喫することが出来ます。

そんなわけで今回は、母チームと父チームに分かれて交代でクライミングをしました。お留守番の日は、子供たちとキャンプ場で遊んだり、一緒に公園や温泉へ行ったりします。近くの道の駅「大月」には、ボルダリング壁のある遊具や、ロングな滑り台もあったりして、子供たちも楽しそうでした。

前回の高知ボルダーツアーでもたくさんの快適な無料キャンプ場があることをご紹介しましたが、大堂海岸でも「樫西園地」というとても快適な無料キャンプ場に一週間お世話になりました。

大堂海岸のルート開拓は、1980年代初頭から、周辺のクライマーによって始まったそうです。残置物のない美しい姿のままほとんどのルートが後世の我々まで引き継いでもらえたことには、深い尊敬と感謝の念を感じます。

ここでクライミングを楽しめるのは、リスク管理を含め自立したクライマーだけ。純粋に岩と自分だけの対話を楽しむことができる貴重な岩場です。

お腹がだいぶ大きくなってからは、トップロープでのクライミングしかしていなかったので、こうしたトラッドのルートをリードするのは本当に久しぶりでした。楽しいのに、初心者のころのような「怖い!」という気持ちが強く、かなり力んで登ってしまいました。

最終日にはSecret Agent Manという、大堂海岸の看板ルートをOS出来ましたが、ランナウトが怖くてカムを沢山持って行ったし、50mいっぱいに伸ばしてピッチを切るころには心の疲労がすごかったです。

黒潮の影響を受けて温暖な大堂海岸、真冬でも日中は半袖で登れます。直射日光にさらされると、ぼーっとするくらい暑い日もありました。

一日遊び疲れ、暗くなるころにキャンプサイトへ戻ると可愛い子供が出迎えてくれる、というのはなんとも贅沢なクライミングツアーです。

もうひとつ、大堂海岸ツアーで欠かせないのが、鮮魚店でさばいていただく極上のお刺身です!ほぼ毎日、安くて新鮮なお刺身と、魚のアラのお鍋三昧。お魚がとにかく美味しかったです!

ファミリーキャンプとクライミング、どちらもめいっぱい楽しんだ1週間でした。こうした2家族助け合い手法をとれば、チャレンジできる幅が広がるし、家族全員参加で楽しめるからいいですね。

はじめは二週間弱ほどの日程を組んでいましたが、後半悪天候となったため合計七日ほどで終了しました。代わりばんこのため登れたのはその更に半分ほどなので、本当にあっという間といった感じでした。大堂海岸、必ず再訪したいです!

稲田 千秋

稲田 千秋(いなだ・ちあき)形成外科医、クライマー。学生時代から登山、クライミングに熱中し、季節やジャンルを問わず様々なスタイルでフィールドアクティビティに興じる。現在はフリーランスで世界中を旅しながらクライミングを楽しむ傍ら、国際認定山岳医として、日本の山岳医療発展のため活動する。2016年 Yosemite国立公園 El Capitan "The Nose"完登。2019年 ペルーアンデス Alpamayo "French Direct"登攀など。

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