岩と雪の世界 ~アルピニズム発祥の地、シャモニー・モンブラン vol.2~【アンバサダー 京屋 仁】

今回はヨーロッパアルプス最高峰モンブラン(4,810m)への挑戦です。

モンブランはアルプスに来たら絶対に登ってみたいと思っていた山でした。しかしその年の猛暑の影響で例年よりも雪が少なく、落石が多発。非常に危険な状態が続いていたので、なかなか行ける機会が巡ってきませんでした。

約1か月待ち、コンディションが整った日を狙って、いざ出発です! モンブランに登る一般登山道は2つあり、今回は一番人気の高い「グーテルート」から、通常1泊から2泊かけて登るところを日帰りで挑戦します!

早朝2時に家を出発し、登山口のあるニーデグル(標高2,380m)までひたすら自転車をこぎます。本当ならここまでモンブラントラムという鉄道がありますが、この時間は動いていないため、仕方なく自転車で頑張りました。鉄道を使う場合は、下のル・ファイエ駅から乗れますが、本数が少ないので、時間には注意が必要です。

ニーデグルに着く頃にはあたりは次第に明るくなってきて、山の稜線と眼下に見えるシャモニーの夜景がとても奇麗でした。さぁ登山開始です。

歩き始めて数時間、緩やかだった登山道も徐々に険しくなり、いよいよグーテルート最大の難関であるグランクロワールが目の前に現れます。

ここは落石の多発地帯で気温が上がると氷が緩み非常に危険となるため、午前中の早い時間に通るのが鉄則です。その年の夏は気温が高い日が続いていたので登山道がクローズとなる日もありました。

登山道は凍っており、アイゼンを装着しての登攀となります。

モンブランもそうですが、ヨーロッパアルプスの有名なルートは、危険個所には必ず固定ロープが設置されているので非常に助かります。

グランクロワールを超えれば真っ白な稜線。奥の宇宙船のような建物がグーテ小屋です。その右奥に見える美しい稜線はエギュイユ・デュ・ビオネッセー(4,052m)へと続いています。

グーテ小屋はモンブランへ登るための最終小屋です。シーズン中は多くの登山者で賑わっています。最近では登山者が多すぎて、ガイドと一緒でなければ予約が取れなくなってしまいました。

小屋を越えれば真っ白な広い稜線を頂上へ歩いて行くだけです。起伏はそこまで激しくありませんが、この時点で既に標高は4,000mを越えているので呼吸がつらく、早朝から歩きっぱなしで脚はピークに達していました。

それでも周りの美しい景色が一歩を踏み出す原動力になります。

山頂に近づくにつれて足元は細く切れ落ちナイフリッジと呼ばれる稜線になっていきます。精神的にも体力的にも疲れてきているので、ここが一番慎重になります。

ようやく山頂。ヨーロッパアルプスのてっぺんです。この日は天候に恵まれ、イタリアやスイスの山々まで見渡すことが出来ました。

山頂でまったりご飯という訳にもいかず、急がないと氷が緩みグランクロワールが危険な状態になってしまいます。写真だけ撮って、すぐ下山開始です。

心配していたグランクロワールも抜け、12時間以上かかってようやく家に帰宅。想像以上の疲労で倒れこむようにベットへ。それでも無事に帰ってこれてよかったと安堵します。いい経験です。今度は鉄道と小屋を使ってゆっくり登りたいですね。

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