ハイキングレポート vol.33 九州トリップ (2022.6.2~6)【アンバサダー鈴木佐智子】

友人夫妻が東京を離れ、福岡に転勤して早2年。「いつか一緒に九州の山を歩こう」と話していたことが、ようやく実現する日が訪れました。   

飛行機を降りて数時間後、大きなリュック(ultimate gear 42)からサコッシュ(TC sacoche L)に貴重品を詰め替え、さっそくサイクリングへ。ペイペイドームや高層マンションが立ち並ぶ福岡の街を颯爽と走り抜ける友人の後を追いかけ、白い砂浜と柔らかな潮風が心地よい百道浜へ向かいました。友人ご自慢の景色は、昨日までのバタバタした現実から、私を一瞬で解放してくれました。

「サザエさん通り」と聞いて東京の桜新町を想像するのは私だけでしょうか。サザエさんの原作者・長谷川町子さんが、ももち海岸を散歩しながら登場人物を考案したのが始まりだと、私はこの時初めて知りました。

市街地で美味しいウェルカムディナーをご馳走になった翌朝は、福岡出身でもある友人に連れられ、長閑な町並みを訪れました。車移動のため、残念ながら友人の実家(江戸中期創業の菊美人酒造)でお酒を頂くことはできませんでしたが、老舗の酒蔵見学や曽祖母の弟・北原白秋直筆の書物や写真を間近で見られる貴重な体験となりました。

涼しげな川下りを窓越しに眺めながら、甘いタレの香り漂う座敷に座り、空腹時間を楽しむこと十数分、ふっくら香ばしい鰻のせいろ蒸しが目の前にやってきました。福岡には美味しい食べ物が沢山あることは知っていましたが、柳川の熱々のせいろ蒸しは初めての味。じめっとした季節の心と身体にしっかり栄養をチャージできました。

午後からは、福岡の最西部に位置する糸島へ移動。野菜や海の幸も人気の糸島は、福岡市街から車でたったの30〜 40分でリゾート気分が味わえる人気スポット。その中でも、絶景ハイキングが気軽に楽しめるという立石山へ行ってみると、登山口からたったの10分で、この景色に出会えました。花崗岩から見渡す玄界灘に面した遠浅の海の青さと白い砂浜は、誰もが魅了されることでしょう。

滞在3日目。この日から九重連山を山中一泊で周る予定でしたが、今日から明日にかけての天候が不安定とのこと。作戦会議の結果、早朝発日帰りプランに変更し、ミヤマキリシマが見頃の平治岳(ひいじだけ)登山口へ向かいました。早朝の木漏れ日と澄んだ空気は、我々だけでなく朝露に濡れた緑や苔も喜んでいるようでした。    

視界が開ける大戸越(うとんごし)でひと休みし、ここから更に登っていきます。本来、鮮やかなピンク色に染まるはずの山肌ですが、近年の害虫被害により、茶色い枯れ枝が目立つ悲しい現状を目の当たりにしてきました。それでも、山頂に近づくにつれ、九重の峰々や坊がつる湿原とミヤマキリシマが織りなす景色は爽快でした。

山頂付近からは、これから向かう小国の涌蓋山や由布岳方面の眺めも満喫出来ました。下山後は、ミヤマキリシマ、季節の素晴らしさを改めて実感しながら、長蛇の路上駐車が続く車道を下って行きました。

熊本県(小国町)と大分県(九重町)にまたがる涌蓋山と、阿蘇の風景を独り占めしたような小高い丘。そこに一軒だけあるのが、地元の新鮮野菜を使ったカレーや手作りケーキが自慢のカフェレストラン BEARです。

鳥のさえずりしか聞こえないスローな時間。‘イマココ’に居る幸せを感じながら、遅めのランチをゆっくり味わいました。

明日は由布岳に登りたいと麓の湯布院に宿泊しましたが、4日目の朝は、予報通りあいにくの空模様。

暴風雨の阿蘇・草千里や黒川温泉など、それもまた懐かしい友人達となら楽しい思い出。次回は晴れた時にまた来よう、と心に誓いました。

最終日は、街中でも山歩きにも便利なリュック(grab knapsack)を背負って、パワースポット巡りへ。コードを引 くだけで大きく開閉するので、水筒や衣類の出し入れも快適。花菖蒲が見頃を迎えた太宰府天満宮では、撫でられすぎてピカピカの御神牛を撫で、「鬼滅の刃」の聖地としても知られる宝満宮竈門神社竈門神社では、上宮のある宝満山まで登りました。この山では、5月下旬〜7月初旬の40日以上をかけて、霊峰の頂を目指す無数のヒキガエルの子供の行進が見られます。健気で神秘的な謎の光景に元気をもらえた気がします。 福岡・熊本・大分の食や自然、歴史を存分に味わえた旅。持つべきものは、地元に詳しい友だなと実感した九州トリップでした。

鈴木 佐智子

鈴木 佐智子(すずき・さちこ)登山やトレッキング、クライミングイベントを開催している「YFクラブ」の登山担当サポーター。これから山歩きを始めたい方やステップアップしたい方が、安心してチャレンジできるクラブ作りをモットーに、日々アウトドアで活動中。

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