平安時代の頃から「熊野三山(熊野速玉大社・熊野那智大社・熊野本宮大社・青岸渡寺)」の三社一寺をお参りするために歩いたという、信仰の道を3年振りに歩いてきました。

滞在初日は、正午からの半日行動のため、レンタサイクルで市内観光へ出かけました。
神倉神社の急すぎる石段を登り切った先に鎮座する御神体の巨岩「ゴトビキ岩」と、眼下に広がる熊野灘や熊野三山の一角をなす熊野速玉大社からパワーを頂き、最高のスタートを切りました。わずか2時間の滞在でしたが、サイクリング中に購入したミカンや和菓子の甘い余韻に浸りながら、電車に乗り込みます。

車窓から見える青い海を眺めながら、紀伊勝浦へ移動。勝浦漁港の市場や船で渡る大洞窟の温泉を満喫しました。夕食は、もちろん海の幸。マグロの水揚げ日本一と言われるだけあって、その味は絶品!心と身体にたっぷり栄養を吸収し、ぐっすりと深い眠りにつきました。

翌朝は、今回歩く熊野古道(大雲取越~小雲取越)のスタート地点である大門坂で始発のバスを降り、語り部ガイドさんと合流しました。朝陽を背に、苔むした石段と樹齢数百年の杉に囲まれた大門坂を登り、聖地「那智山」へ向かいます。

いくつもの石段を登り、神聖な空気に包まれた熊野那智大社や青岸渡寺の参拝、那智の滝の眺望を堪能しました。ゆっくりと滞在したい気分になりましたが、まだまだ先が長いため足早に移動。那智山青岸渡寺の裏手の石段から、いよいよ熊野古道の中でも最も険しい「大雲取越」コースへ出発です。

木洩れ日の中、更に石段や登り坂が続きます。熱った身体に朝の冷たい空気が心地よく、新緑の季節とは違った魅力を感じることができました。那智勝浦の海が見渡せる舟見茶屋跡で、ホッと一息した後は、再び木立の中へ分け入ります。

越前峠や胴切坂の苔むした石畳のアップダウンが続く中、歌碑に込められた当時の想いや峠越えの苦労を語り部さんから聞きながら歩く時間は、長閑で楽しいひとときでした。

最も陽が短いウィンターシーズンは、夕方5時前に辺りが薄暗くなります。山中の苔むす石段や坂を慎重に下り、宿泊先へ向かいました。クリスマスツリーの灯りに出迎えられ、温かい夕食とお風呂に安堵する夜でした。

関東へ戻る最終日(3日目)は、見渡す限り薄暗い朝6時から「小雲取越」コースへ向かいます。朝陽が差し込むシダの山道がとても印象的でした。ナチシダを始めとする数種類のシダがあること、正月飾りや神事に使われるウラジロシダの意味や古くから伝わる風習など、語り部さんからいろいろなことを学びました。

「百閒ぐら」で果無山脈を一望した後は、小雲取越のゴール・請川へと緩やかに下っていきます。請川から更に熊野川沿いのアスファルトをしばらく進み、最終目的地の「熊野本宮大社」と「大斎原(おおゆのはら)」へ向かいました。明治の大洪水まで本宮大社があったと言われる旧社地に聳える日本一の大鳥居「大斎原」は、圧倒的な存在感を放っていました(残念ながら撮影禁止)。

入浴施設の設備故障の為、参拝後の入浴はお預けとなってしまいましたが、名物のサンマ寿司やマグロなど、最後にもう一度堪能し、大満足の山旅を終えることが出来ました。3年振りの熊野古道、青空と共に過ごせたことに感謝します。