前回につづいて、日高山脈でのhike&bikeの様子をお届けします。
1472mの楽古岳頂上は登山中の穏やかであたたかい天候とは一変し、深い靄と立ってるのもままならないような強風だったため、お昼ごはんを食べるや否や、すぐに下山することにしました。まさに山の頂上ならではの天気です。
しかし頂上から少し下っていくとたちまち視界が開け、連なる日高の山や開拓された農地、太平洋の海岸線が見えてきました。下山してから自転車で向かうは、海です。
日帰り登山の良さは、なんといっても最小限の荷物で歩けること。リュックサック一つにおむすび、レインウェア、ウォーターフィルターボトル、カメラだけを入れて(私に関しては手ぶらで)、身軽な装備で気軽に登山できる素晴らしさを、私たちはこれまで知らなかったように思います。連泊登山の日常から離れた世界へどんどん突き進んでいく感覚は言わずと素晴らしいものですが、たった1日でもその経験が十分できるのだと再確認しました。
山での発見や感動は、見晴らしのいい風景だけではもちろんありません。ふと足元に目を向けると、無数の小さな生命たちの存在に気付きます。色鮮やかな植物やキノコ、またありとあらゆる特徴をもった虫たちを見ていると、なかなか前へ進めなかったりします。
行きしなに川に足がハマってしまい、靴下が濡れていた私にとって、下り坂は予想以上に困難なものでした。なぜなら足のそこら中に靴擦れができてしまい、急勾配の下り坂で自分の体重を支えるのに一苦労。一歩足を踏み出すたびに激痛が走り、靴擦れはこんなにも致命的なのかと思い知らされました。その奇妙な歩き方と筋肉の使い方によって、この日から数日間凄まじい筋肉痛に悩まされたのは言うまでもありません。
必死の思いで下り坂パートを終え、渓流沿いのトレイルに戻ってきました。「渓流」と言いますが、その景色は渓流とはかけ離れたものでした。かつてはゆるやかに水が流れていたと思われる場所に大量の大木が流れ込み、今では殺伐とした風景が広がっています。
自転車で旅をしていると、こういった倒木や土砂崩れの被害は北海道各地で頻繁に見られ、その多くが2016年に起こった台風被害の痕跡だと聞きました。これほど大きな木が根こそぎ流れてしまうほどの自然災害の威力とは、どんなものだったのでしょうか?想像を絶します。
今年の北海道は、北海道の夏らしからぬ気候だったと言います。梅雨のような雨が長期間降り続き、この雨で農家さんが頭を抱えているという状況を何度も耳にしました。そして「昔はこんな風じゃなかった。」という声もよく聞きます。
「異常」と言われる気候や自然災害が、いつか私たちの日常と化してしまう前に、なぜこのような変化が現れ、自然界に異常をきたしているのか、じっくり根本の原因を考えるべきときが来ていると思います。そしてそれは、私たち人間の今の生き方と無関係では決してないはずです。
日帰り登山を存分に満喫して山から降りてきた私たちは、もう一泊誰もいない山荘でお世話になりました。夜中ふと目が覚めて外へ出てみると、頭上には満天の星が。しばらく眺めていると、強い光を放ちながら目で追えるほどゆっくり移動する流れ星が通り過ぎていきました。時間が止まる瞬間とは、まさにこのことです。
今回使ったアイテム
リュックサック:SABRE 30、帽子:ventilation cap ST +d、シャツ:delta L/S、パンツ:journey summer pants