マラウィの国土を地図で見て一番に目を引くのが、縦長に伸びる巨大な湖だと思います。湖の大きさは長さ560km、幅は最大で75km。マラウィ湖、あるいはニャサ湖と呼ばれるこの湖は、マラウィ人の生活にとって重要な水源であり、魚の宝庫でもあります。ちなみに「ニャサ」はこの地域の原住民の言葉で“湖”という意味なのですが、この地に初めて達したヨーロッパ人の探検家がそれをそのまま湖の名称として名付けたと言われています。

1ヶ月間マラウィを移動し続け、心身ともに疲れが溜まっていた私たちは、マラウィ湖の目の前にあるキャンプサイトにテントを張って、しばし休息を取ることにしました。いつでも水辺には人がたくさんいて、友達とくつろいだり、食器を洗ったり、水浴びをしたりと、皆んな思い思いに時間を過ごしています。

私たちがここでやるべきことといえば、とにかくよく食べ、よく寝て、体力を回復させること。そんな幸せなバカンスの時間を過ごすのに、この場所は最適でした。ほとんど波のない湖はとても優雅で、そのゆるやかな流れのようにこの場所を流れる時間さえもがゆっくりと過ぎているように感じました。


特に何をするでなく水辺を眺めているだけでも、なぜか飽きが来ることはありません。この日は底に穴があいて沈没しかけている小舟を何とかしようと、子供たちがせっせと船に浸入してくる水をバケツですくっていました。こんな状況でも、子供たちは焦ることなくのんびりとしています。

歩いて5分ほど行ったところにある村には食堂やマーケットがあり、150円もあればおなかいっぱいご飯を食べられるのですが、魚や肉の入ったメニューがメインのため、野菜をいっぱい食べたい私たちは基本的にいつもどおり自炊です。普段はガソリンを使って火を炊くストーブを利用しているのですが、キャンプサイトにレンガとサトウキビの茎が転がっていたので、それを使ってロケットストーブを作ってみることにしました。

ロケットストーブとは、少量の薪などの燃料を効率的に燃焼し、煙や粉塵の発生を抑える、本来発展途上国での使用を前提として開発されたストーブです。この簡単に自作できるロケットストーブを家に作れば、薪となる木を大量に伐採する必要はないし、室内で煙たい思いをする必要もありません。
「家でお母さんに作ってあげてね!」と集まった地元の子供たちに作り方を説明をしながら一緒にストーブを作りましたが、どれだけその利点が伝わったのかはいまいち分かりませんでした。だけど純粋に楽しんでくれたのなら十分かとも思います。


夕方になると、マラウィ湖周辺のムードは一段と高まります。どうしてアフリカの夕焼けはこんなにも幻想的なのでしょうか。オレンジ、むらさき、ピンク、と一瞬一瞬でころころと色が変わっていきます。

地元の人がこの風景を見慣れているのは確かですが、1日の終わりにここで時間をゆったり過ごすことができるのは、とても幸せなことだと思います。

数日間だけ過ごすつもりが、居心地が良すぎて結局1週間も滞在したマラウィ湖のほとり。おかげで心も体もすっかり元気になりました。疲れているときは一旦立ち止まって、気持ちのいい場所でゆっくりする。短期間でもそうすることで、毎日の何でもない時間がまた彩り始めるのを身にしみて感じました。