自宅からの日帰り、または数日間のオフを利用して最大限に自然やアウトドアを満喫するマイクロアドベンチャー。今回は、できるだけ標高の高い山の空気を吸いたい!という欲求を叶えるため、思い立って日本三大霊山の一つである白山連峰へ行ってきました。

現在私たちが拠点とする関西には、2000mを越える山がありません。もちろん登り甲斐のある山や美しい渓谷トレッキングなど、様々な行先の選択肢はありますが、標高の高い山特有の空気感や景観は他では味わえないものがあります。関西からでも無理なく2、3日で行ける高山はどこだろうと地図を辿り、目に止まったのが石川県にある白山でした。

別当出合登山口から白山の最高峰である御前峰までは往復で約7〜8時間とのことなので、日帰り登山も可能でしたが、翌日の天気下り坂予報を考慮し、2時間登った先にある甚之助避難小屋に一泊させてもらうことに。避難小屋までは、背の低い私にも無理のない段差の石畳が続き、その整備の行き届いた登山道に感動しっぱなしでした。

肝心のお天気はというと、標高が高くなるにつれてガスが立ち上っては消えを繰り返していて、今日の夕日は期待できないなと残念に思っていたのですが、その予想はありがたいことに裏切られ、みるみるうちに赤く染まった山が姿を現してくれました。

空のグラデーションショーは1時間以上も続き、空腹も忘れて移りゆく空の色をじっと眺めていました。無風と無音のなかでの夕暮れの時間ほど、贅沢なものはないでしょう。

ぐっすりと眠って目覚めた翌朝。眼下に広がる雲海を眺めながら朝食を取り、パッキングをさっと済ませ、いざ出発。しばらくは登り坂が続き、標高2000mを越えると息が徐々に上がってきました。ペースを乱さずスイッチバックの石畳を着実に登っていくと、その息切れでさえも気持ちよくなってくるのが酸素の薄い土地ならではの感覚でしょうか。そしてをひと峠登り切ったその先には、私が今回ひそかに楽しみにしていた高原地帯が!


開放的な高原に敷かれた木道を歩くのは軽快そのもの。それはこれまでの登り坂を登り切ったご褒美でもありました。色付く高山植物を満喫しながらリラックスして歩いていたので、すでに山頂が目前に見えていたことに気付いたのは、下山して写真を見た後のことでした(笑)。


弥蛇ヶ原から少し登った先にある白山室堂ビジターセンターに到着したら、白山の最高峰まではあともう一踏ん張り。頂上からは、どんな景色が見えるだろうとワクワクしながらも、標高が上がるにつれて変化する背後のカラフルな景色に気を取られ、何度も立ち止まっては後ろを振り返ってしまいます。

そしてついに頂上標高2702m、初めての御前峰です。ここまではほぼ無風だったですが、頂上に登頂するなり、強い風に吹きさらされることに。汗で濡れた身体が冷える前に、急いでフリースを羽織りました。まずは、霊峰白山を御神体としている白山比咩神社の奥宮にお参りをしてから、じっくりと辺りを堪能することにします。

頂上の先には、これまでの鮮やかな色の風景と一転し、火山らしい岩肌の目立つ険しい山の風景が広がります。世界中のどの山へ行っても、峠や頂上を越えるとまったく異なる色や風景があることに、いつも驚かされます。だからこそ山を登ることはやめられないのだと思います。

まだ時間と天候の様子に余裕があったため、山頂周辺に点在する火山池を間近で眺められる、お池巡りコースへ。これもまた上から見ていた景色とは違い、巨岩などの噴火が生み出した造形芸術を楽しむことができます。ぜひ少し遠回りして、のんびり歩いてみてほしいコースです。

紅葉から高山植物、火山湖から雪渓まで、1日で様々な山を堪能できる白山。他の季節にもぜひ登ってみたい山のひとつとなりました。なかなか遠出がしづらいご時世ではありますが、平日を狙ったり、時間をずらしたり、ルートを選んだりすることによって、静かな自然を満喫できます。その必要性を改めて実感したマイクロアドベンチャーでした。