アフリカ自転車旅の最後となるケニアでのサイクリングは、これでアフリカともお別れだという思いもあってか、私たちにとってバカンスのような時間でした。高山地帯からサバンナといった変化に富んだ地形や、世界のどこにいてもまた会いたいと思える人々との出会いが、アフリカ旅を締めくくるに相応しい充実感を与えてくれました。

12月のケニアは、まだ小雨季のシーズン。雨が降りそうにない快晴の日でも、突然大雨になることがよくあり、雨がぽつぽつ降りだすとすぐさま雨宿りできる場所へ避難します。旅中常に被っていた〈ventilation cap ST〉は、こんな変わりやすい天気の時も大活躍でした。キャップのつばが大きめなので、自転車走行中はしっかり日差しを妨げ、雨に少し濡れてもすぐに乾いてくれます。通気性もとてもいいので、ヘルメットの下に被っても蒸れることはありませんでした。

ナイロビへのルートは交通量の多い国道を避け、ナクル湖国立公園の西側の裏道を走行することにしました。一本国道を逸れるだけで、車通りのほとんどない静かでのどかな道へアクセスできるのは私たちにとって本当にありがたいことです。車の渋滞がほぼ100%ない代わりに、ヤギの動物渋滞はしばしば起こりますが、、、

道は部分的に状態がとても悪く、粘土っぽい土が変形して自然にできたマウンテントレイルのようになっていました。そのときはジェットコースターのようなアップダウン走行を楽しみましたが、大雨のあとは至る所に水溜りができて、かなり運転困難なのだろうと想像しました。

しばらく漕いでいると、遠くのほうに動物がたくさんいるのが見えてきました。普段なら、それは牛やヤギなどの家畜のはず。しかし、そこにいたのはなんとシマウマ、イボイノシシ、ガゼルの群れ! ナクル湖はシーズンになるとやってくるフラミンゴの群れが有名だと聞いていましたが、他の野生動物たちを道路から近い距離で見られるとは思っていなかったので嬉しいサプライズです。

そしてさらに先には、ガードレールのすぐそばに食事中のキリンを2頭発見。まさに動物園のような動物との遭遇率です。ですが動物園と大きく違うところは、そのキリンが道路側にいる私たちのほうへ向かってこようと思えば来られるということ。また、自由に草木を食べ、広い自然のなかで佇む動物の姿の美しさは、動物園の動物のいる光景とは比べ物にならないと確信しています。

車通りのある広い道に出てもシマウマの姿はそこら中にあり、その日1日シマウマを普通の馬のように見続けて、夕方にはすでにシマウマのいる風景に慣れてしまうほどでした。思いがけずアフリカの野生動物たちにまた出会うことができ、満足した気持ちで大都会ナイロビへ向かいました。

ナイロビでは、幸運にもケープタウン在住中や旅中に出会った友人たちが私たちを家に快く招いてくれて、まだまだ治安がよくないとされるナイロビを体感することもなくとても快適に過ごしました。また、ケープタウンと同様の深刻な貧富の差はひしひしと感じたものの、白人と黒人という意味での分断と格差はケープタウンよりも遥かに低いようでした。そういった意味で、ナイロビはカルチャーの融合と活気を生み出す刺激的な街の印象を受けました。

友人の家の信じられないくらい広い庭でリラックスしながら、ここまで私たちと共に旅してきてくれた自転車と荷物をパッキングしていきます。自転車を飛行機に積むのはこれが初めてだったので、厳重すぎるほどしっかりと梱包し(捨てられていたエアマットレスを袋がわりに利用)、友人たちに別れを告げナイロビ空港へ向かいました。ここで自転車を降り、飛行機に乗ってしまうのに惜しい気持ちは少しありましたが、空をひとっ飛びした先に何があるのかわくわくしている自分も確かにいました。さぁ、いざ次なる大陸へ。