その道を通るべきか否か…ぎりぎりまで迷ったあげく、意を決して行くことにした一本の道がウガンダにあります。

本来なら、その後ケニアへ向かうため東へ進まなければならないところを、わざわざ100kmも北上したのには理由がありました。それは、アフリカで指折りしかない、サファリ内を自転車で走行できる道があるからです。様々な野生動物が生息するウガンダのクイーンエリザベス国立公園には、通行料を支払うことなく通過できる一般国道が公園内を突っ切っています。

サファリを走行する前日にテントを張った場所は、国立公園全体を一望することできる高台でした。これまでの緩やかなアップダウンのある道と打って変わり、眼下にはまさにサバンナといった平坦な草原が広がっています。そしてよく目を凝らすと、遠くには標高5,000mを超えるルウェンゾリ山地、そして近くのアカシアの木の下には、アフリカゾウが佇んでいるのが見えました。その時はサファリ内を自転車で走る緊張感から、ワクワクよりもドキドキが勝っていましたが、今思うとなんと贅沢な光景だったのだろうと思います。

道中でたくさんの野生動物に出会えると、友人のサイクリストから強く勧められたこの道。しかし、過去にナミビアのサファリを横切る国道でアフリカゾウに威嚇された経験から、当時の私たちは野生動物に対しての恐怖心を拭えずにいました。でもやっぱり、野生動物の生命力をまた感じたい。その気持ちは確かにあったので、今回は以前よりも慎重に自転車を漕ぎ始めました。

まず最初に出迎えてくれたのは、木の上で団欒中の猿たちでした。私たちの存在に気が付いてもちらりと一瞥しただけで、仲間とじゃれたり、木の実を食べることに夢中です。

この国道は、車のほとんど通らなかったナミビアの国道とは違い、地元の人も自転車で行き来しているようでほっとひと安心。その後しばらく、周囲を見渡しながら走行していると、早速100mほど先にゾウの群れが歩いているのを発見!前回は10mほどの至近距離で対面してしまったアフリカゾウも、相手を警戒させない距離感で眺めると穏やかそのものでした。やはり、野生動物の堂々とした存在感は、何とも言えないものがあります。

また、ジープサファリだとあまりじっくり見ることが出来ない小さな鳥たちをゆっくり観察できるのも、自由な自転車サファリの魅力です。川辺にはたくさんのヒメヤマセミが餌の魚を目掛け、ものすごい速さで水中へ次々とダイブしていく様子を、しばらくの間のんびり観察していました。

アフリカ南部でもよく見かけたハタオリドリは、その名のとおり、とても器用にカゴのような巣を作ることで有名です。彼らの巣が何十個とぶら下がる大きな木の周りは、おびただしい数の鳥たちの声が鳴り響いていました。

このサファリ内で、もっとも背筋が凍った瞬間は、巨大バブーン(ヒヒ)の群れが道端に現れたときでした。バブーンは南アフリカ在住中にも、キャンプやトレッキングに出かけると必ず遭遇するほど見慣れた動物でしたが、ここのバブーンの体は一回り大きく、その筋肉質な体と鋭い牙をこちらへ向けられると冷やっとしてしまいました。

動物以外のこのサファリでの見所といえば、赤道ラインがこのサファリ内を通っていることです。草むらの中にひそかに建てられた赤道を示すモニュメントは、とても簡素はものでしたが、遥か彼方の南半球から北半球へ7ヶ月かけてやってきたんだと思うと、少し感慨深い気持ちになりました。

多くの動物に出会い、楽しく走行できたサファリの道に私たちは大満足で、野生動物への恐怖心もやっと打破できたようです。勇気を出して、来てみてよかったと心から思いました。

サファリサイクリングの後に訪れたキャンプサイトのある森には、アビシニアコロブスやベルベットモンキーなどの猿たちが生息していて、夜は至近距離で鳴り響くサルやカエルの鳴き声で眠れないほど賑やかでした。完全に彼らのテリトリーにお邪魔させてもらった私たちは、これからもサバンナや熱帯雨林などの動物たちの生活の場が失われず、平和に保たれることを願うばかりです。