私たちは普段の生活のなかで、通りすがりの見知らぬ人に笑顔で挨拶する機会はどれほどあるでしょうか? 都市ではあまりに人が多すぎるため、他人と目を合わすこともなく通り過ぎるのはごく一般的な感覚だと思いますが、田舎では道ゆく人がニコッとしたり、声をかけてくれることがたまにあります。様々な国を自転車で旅していると、この「見知らぬ人との距離感」は、国や地域ごとで大きく異なっていることに気が付きます。

私が思うアフリカの最大の魅力は、紛れもなく人々の底抜けの明るさと人懐っこさです。見知らぬ人との距離感が近すぎるほどのアフリカでは、言葉が通じなくても彼らの感情が伝わりやすく、ただ自転車を漕いでいるだけで数え切れないほどの人々と関わりを持つことになります。そんな中でもルワンダの人々には、予想だにしなかったとても興味深い特性がありました。

あらゆる国で、子供たちが私たちの自転車の後を追いかけて走ってくることがしばしばありましたが、当然ながら自転車の速度と走る速度に差があるため、彼らが付いてこれても50mほどが限度でした。しかしルワンダでは、とにかく長い上り坂が多いため、彼らは体力の限界まで私たちの横を走り続けたのです。

時には、私たちとは逆方向に向かっていた子供も、私たちを見るなり方向転換をして突然走り出します。それも、数十メートルでなく、何十分もの間です。硬いアスファルトを裸足で、汗だくになりながら走る子供たち。その表情はまさにマラソンランナーのようで、私たちが峠の頂上に到達するか、あるいは彼らが飽きるか疲れるまでその並行走行は続きます。

さらに驚いたのは、ルワンダで走るのは子供たちだけではないことでした。青年や自転車に乗ったおじさん、頭に荷物を乗せた女性まで、私たちの横に並んでひたすら走るのです。特に話しかけてくることもなく、まるで本能のように無心で走り出すルワンダの人々。最後までなぜ彼らが走るのかという疑問が晴れることはありませんでしたが、ルワンダを出国すると誰も走らなくなったのが不思議でなりませんでした。

さまざまな独特の特性があるルワンダでは、食堂のシステムとメニューも大きく違っていました。東アフリカでは、基本的に豆と少量のお肉と野菜にお米かウガリ、というのが基本のワンプレートメニューでしたが、ルワンダではなんとビュッフェスタイルでスパゲッティやフレンチフライが食べられます。
ビュッフェスタイルとはいっても、何度もおかわりにいけるシステムではなく、1回だけ好きな量の食べ物をプレートに盛ることができるのです。お皿から落ちそうな大盛りプレートでも、ワンプレート150円ほど。その味もかなり美味しくて、腹ペコのサイクリストには最高のシステムでした。


ぎゅっと魅力が詰まったこの小さな国にも、危機的な問題があります。本来、約30年前までは豊かな熱帯雨林で国土全体が覆われていたルワンダですが、過去15年の間にその99%の森林が失われ、その間に人口は倍増したと言われています。それは辺りの景色を見ても一目瞭然で、見渡す限りの丘はてっぺんまで畑となっており、森林がほぼ残っていないのが見て取れました。実際の森林破壊の情景を目にするのは、想像以上に気持ちに堪える経験です。


現在ルワンダ政府は、2020年までに失われた熱帯雨林の30%を取り戻す政策を激化しているという記事を最近読みました。大規模な範囲で環境問題の影響を一番に受けてしまうであろう(すでに受けている)アフリカのこれからの動きは、私たちにとっても他人事ではありません。いつかまたルワンダを訪れるとき、あの丘陵風景や路上の人々はどう変化しているのか。色んな意味で、また訪れたいと思わせてくれる印象的な国です。