月に一度必ずどこかの岩場に泊りがけで出かけるロックトリップというのをよくやっていました。去年の冬に関東の岩場に足を運びました。

僕の地元、長野県では例年12月を過ぎると地元の岩場はマイナス5℃〜マイナス10℃と寒すぎてとても登れるような気温ではありません。そこでクライマーは雪の少ない県へと南下していくのですが、今回はまだ暖かい伊豆に決めました。

伊豆は冬でも登れるエリアがたくさんあり、その一つが城山です。城山は非常にクライミングの歴史が古く、1960年ごろからルートが数多く作られています。ルートは易しいものから5.14台のハードルートやマルチピッチなど多くの人が楽しめる内容となっています。内容も素晴らしいのですが、私は何といってもこの姿に圧倒されました。山全体が一つの岩の塊のようで圧巻です。

今回城山を訪れるのが初めてだったので、何をやろうか非常に迷いました。大ハング(ワイルドボアゴージ)はとても興味があったのですが、アプローチに40分ほどかかってしまうため断念……。折角2人いるので、城山を代表する南壁でマルチピッチをすることに。

何本かショートピッチを登った後に、知り合いからお勧めされた「バトルランナー5.10b」という城山の看板課題をトライしてみることに。いつもなら渋滞するほどの人気課題なのですが、今日は誰もいません。ラッキーです。
登り始めると、出だしのスラブが意外と悪く(足が乗せづらく)、城山特有の細かいポケットが多く足を乗せるにもしっかりと爪先が入らず立ちづらいホールディングとスタンスに悩まされました。エリアによって違う岩質を楽しめるのもロックトリップの魅力です。

このルートは、2ピッチ目が核心ピッチとなります。1ピッチ目と同じようなスラブを20mくらい登ったあと、鎌形ハングというハングが現れます。鎌形ハングのすぐ下に終了点があるので、ここでピッチを切る人も多いですが、ハングでフォールした場合ビレイヤーにぶつかる可能性があるので、そのまま進みました。ハング越えはなかなかパワフルで核心らしい核心でした。

あとはほぼ直線で進むので、2ピッチ分つなげて終了。振り返るといい景色です。こんな所でクライミングをしていたのかと驚きます。終了点でまったりしながら次は何をやろうかと話していると突然の雨。急いで懸垂下降を始めました。なんとか地面まで降りたものの雨はさらに強くなり、そのまま車に退散。

しばらく車の中で待っていましたが、雨が止む気配がないので気持ちを切り替えて地元のボルダリングジムに行くことに。ボルダリングジムはジムによって個性があって、たまに違うジムで登るのは新鮮で夢中になってしまいつい登りすぎてしまいます。

初日のクライミングを終えお風呂にも入ったら、夕飯を食べるお店を探します。行き当たりばったりでそこにあった場所に入るのが我々の旅のきまり。今回は趣のある居酒屋で美味しいお刺身と焼き鳥をいただきました。本当はここで美味しいビールを呑めれば最高なんですが……車なので我慢します。

翌日、海沿いに車中泊していた我々の目的は海から昇る朝日を眺めることです。いつも山から昇る朝日を見ている私たちからすると、海の上に浮かぶ太陽は何度見ても神秘的で美しいものです。朝からとても爽やかな気持ちになれました。

さて、2日目の目的地は同じく静岡県伊豆の城ケ崎。ここも日本にある超ビックエリアの一つで、海岸沿いに数10kmにもわたって広がる断崖は全て登る対象です。ここはただ広いだけでなく、スポーツルートの他にクラックルートにおいても日本最難クラック「マーズ5.14a」をはじめとした数多くのルートがクライマー達を惹きつけます。

今回はあいにくカムを持ち合わせていなかったのでクラックエリアはお預けとなり、スポーツルートのできるエリアを探すことに。スポーツルートのエリアだけでもたくさんあり、どこに行こうか迷います。取りあえず人気のルートがたくさんあると聞いて、シーサイドエリアで登ることに決めました。

シーサイドエリアは、海岸沿いの崖に位置すのでアプローチは懸垂下降をして向かいます。エリアの特徴としては垂壁よりやや前傾斜(いわゆるオーバーハング)した壁がメイン。ルートはそれほど長くなく、あっても20mくらいでしょうか。

ホールドは比較的私が得意とするカチが多く、初めての岩場でしたが早く順応できました。アップを済ませたところで早速お目当てのルートにチャレンジ。来る前にトポを見ながらこれだけは絶対にやりたいと思っていた「シンデレラボーイ5.13ab」。垂壁からオーバーハングを大きくトラーバースして、最後はパワフルなムーブでハングを越えていくルートであり、核心は中間のトラバース地帯で細かいカチを持って非常に繊細な動きを要求されます。

1回目のトライでは核心のトラバースでやはり落ちてしまいましたが、その後ムーブをしっかりと確認し、休憩した後の2回目のトライで無事登ることができました。核心を越えた後のハング地帯も、疲れていると練習していたときとは別物に感じて気を抜けば落ちるところでした。久しぶりに振り絞ったトライができて満足です。

最終日だったため、長居はせずこれで終了。家に帰るまでがロックトリップなので安全運転で帰ります。伊豆の岩場はまだまだ楽しめそうです。