不遇の山~明神岳~【アンバサダー 京屋仁】

穂高連峰のひとつである明神岳。圧倒的な人気を誇る穂高岳のすぐ傍にあるにも関わらず認知度は低く、バリエーションルートという事もあり、登る人は多くありません。しかし個人的には北アルプスの中で3本の指には入ってくるだろうルートです。バリエーションルートなのであまりお勧めできませんが、ある程度経験を積んだら是非登っていただきたいルートです。

明神岳は北アルプスにある奥穂高岳有する穂高連峰に位置し、標高は2,931mです。一般道はなく、山頂へはバリエーションコースを通っていかなければなりません。そのため、この山を登るにはルートファインディングや岩登りの技術が多少必要になってくるでしょう。

今回私たちは明神岳主稜と呼ばれる明神岳の主となる尾根を登るコースを選びました。最初は前穂高岳を登るルートと同じ岳沢登山口から入りますが、途中で尾根に取り付きます。バリエーションとはいえ踏み跡もあり、危険個所にはトラロープも張ってあったりと非常に親切です。

歩き始めていきなり急登になるのがこのルートの体力的な核心です。あまり体が起きてない状態でこの急登を登るのは本当にキツいんです。森林限界を超えてようやく一息。雄大な穂高連峰を真横に見ながら岩稜帯を登ります。眼下には梓川が見え、かなりの標高差を上がってきたことを実感します。

写真の一番奥に見えるのが奥穂高岳です。日本で3番目に高い山です。左に行くと有名なジャンダルム、ガクンと切れ落ちて天狗ノ頭、間ノ岳、西穂高岳と続く非常にスリリングな岩稜ルートです。地図上では点線となっているので一般ルートではありませんが、山を登っていたらいつかは行きたいルートですよね。

行動を開始して2時間弱で今日の宿です。ここから先はテントを張れる場所が無いため、いつもここでテントを張ります。明神岳に登るときは必ず1泊以上するようにしていますが、それはコースタイムが非常に長いという事と日帰りでは勿体ないという事があります。その理由はこのロケーションを見れば納得できると思います。

早めにテント場に着くと午後はまったりと過ごします。何をするわけでもなくただテントの中で外の景色を眺めます。割とこの時間が好きです。

長期縦走でなければ荷物を減らす必要もないため、食料も豪華な物を持っていくようにしています。食後に夕日を見なら呑むワインなんて最高ですよね。もちろんビンでは持って行けないのでプラティパスに入れています(笑)。そこは我慢です。

ちなみにこの日は昼間寝すぎたせいで夜は寝られなくなりました。翌日かなり早いので大丈夫なのですが、これもテント泊あるあるです。

午前3時、まだあたりは真っ暗な中、テントを撤収しヘッドライトの灯りを頼りに登り始めました。一般ルートによくある赤丸はバリエーションルートにはなく、わずかに見える踏跡と己の勘で進んでいきます。

徐々に周りも明るくなってきました。今日は雲が多めですが太陽に照らされて幻想的です。この時間は世界が止まっているようでいつまでも見ていたくなります。ついつい写真を撮りたくなって歩きを止めてしまいます。

ようやく太陽が昇ってきました。神々しいですね。まさに御来光と呼ぶにふさわしい壮観さです。太陽の力って偉大ですね。それまでは極寒だったのに一気に暖かくなった気がします。

振り返ると山肌が太陽に照らされて真っ赤になっていました。山ではモルゲンロートと呼ばれるこの現象ですが、こんなにも真っ赤なのは初めてでした。ただ昔から朝焼けがある日は天気が崩れるといわれている通り今日は午後から天気が悪くなる予報です。奇麗な景色に見とれていましたが先を急ぎます。

途中休憩をしている時に岩陰からライチョウが出てきました。穂高連峰ではあまり遭遇したことが無かったので驚きましたが、登山者の少ない明神岳には結構いるのかもしれませんね。

明るくなった頃には明神岳の核心の2峰、主峰を越えました。ただこれで終わりではなく、ここから一般道に合流しなければいけません。まずは前穂高岳を目指します。ここが今日一しんどかったです。目標を登り終わってしまうと一気に疲労感がやってきます。

当初の予定では涸沢でもう一泊する予定でしたが、午後から翌日にかけて天気が悪くなりそうだったので奥穂高岳をゴールとして下りることにしました。下りはジャンダルムを通り天狗にコルからエスケープルートを使って下山。かなりザレた道ですがここが最短だと判断し、それが功を奏してなんとか雨が降る前に下山できました。

後半かなり慌ただしい行程でしたが無事下山することができました。たまには岩ではなく重い荷物背負っての縦走登山も悪くないですね。また計画しようと思いました。

京屋 仁

京屋 仁(きょうや・じん)クライマー。長野を中心に活動。フリー、アルパイン、バックカントリー、トレイルランニングとオールラウンドに精通。 主な成果は小川山NINJA5.14a第11登、北岳バットレスDガリー奥壁オンサイトフリーソロ、八ヶ岳大同心大滝オンサイトフリーソロ。

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