信州には名立たる名峰が沢山あります。その中でも日本百名山になっているような山はとても人気で、長野県外の人にもよく知られています。一方でそんな百名山の陰に隠れた里山などは、いかに素晴らしい山であってもどうしてもマイナーな山になってしまう。そこで今回はそんな信州の隠れた名峰を全国の皆さんにご紹介します。

今年の冬は全国的に大雪となり、私が住んでいる安曇野も珍しく雪国らしくなりました。それでも昔は1mぐらい平気で積もっていたのが、今は多く積もっても50cmぐらいなので大分減ってきてます。寂しい気持ちもありますが、多く降ると雪かきが大変なのでこのくらいが丁度いいかなって思ったりもします。

今回は里山というテーマなのですが、真っ白に輝いている北アルプスを眺めているとついつい「あっ!あの谷滑ってみたいな!」と思ってしまいますし、夏は夏で木々が鬱蒼としていて虫も多く無意識に避けてしまい、結局のところ里山にあまり行けていないです。

でも最近気づいた事ですが、冬の里山って葉が落ちて眺めが良く、冬なので当然虫も多くないし、人も少ないため静かで良い事尽くめなんですよね。今回登った京ヶ倉山も、夏は地元の人に割と人気で駐車場が埋まるほどですが、冬は御覧の通り我々だけでした。

この京ヶ倉山は長野県東筑摩郡生坂村という場所にあり、松本や安曇野からも30分〜1時間弱と非常にアクセスがいいです。標高は1000m弱ほどですが、所々スリリングな岩場のある変化に富んだルートが魅力です。

ただ岩場も多いルートなので、写真のように雪が少し積もると滑りやすく注意が必要です。この日は特に冷えていて、登山道に積もった雪もカチカチに凍っていました。寒さが厳しい冬でしたが、寒さが故に見ることのできる絶景もあります。

それは『霧氷(むひょう)』です。冬に見られる自然現象なのですが、一般的には『樹氷(じゅひょう)』という言葉の方が聞き覚えがあるのではないでしょうか。樹氷も霧氷の一つで、過冷却の水滴(0℃以下でも凍っていない)からなる濃霧や雲が、樹木に衝突した際に凍結付着することで、白く脆い氷層が出来る現象です。雪の多い地域では、この樹氷が大きく育ち「スノーモンスター」と呼ばれ、山形県の蔵王などが有名なスポットとなっています。

同じ霧氷なのですが、この時は樹氷とはちょっと違う『樹霜(じゅそう)』という現象に出会えました。樹霜は地面より高い位置にできる霜で、樹木の枝などに見られます。結晶の形が樹枝状や針状になるのが特徴で、空気中の水蒸気が昇華し、霧状になった水蒸気が付着することでできます。冬晴れの朝、放射冷却によって冷え込み、風が強くない状況に限って見ることができます。今回は絶好のコンディションでした。

京ヶ倉山の登山ルートは基本的には尾根沿いを歩いていきます。ルートの途中には、見晴台といった視界が開けて景色を楽しめる所がいくつか出てきます。実はこの辺りは戦国時代に山城がいくつも築かれ戦の舞台となった場所で、所々でそういった面影を感じることができます。

稜線に出ると登山道は急に様相を変え、一番の難所を迎えます。切れ落ちた細い尾根の両側は崖になっています。恐い所はたった数歩で通り抜けられるのですが、ここでもし突風が吹いたらなんて想像したら足がすくみますね。フィックスロープが張ってあるので怖い人は持ちながら通過しましょう。。

さぁ最後の急登です。ここ本当に急登でした。倒木やフィックスロープなどを使って登っていきます。なんだかアスレチックみたいで面白いです。確かにきつい急登なんですが長くないので楽しめます。このルートの良い所はそこなんです。短い中に変化がある。そういう山って珍しいですよね。

登山口から約2時間くらいで山頂に着きました。山頂からは雪を抱いた美しい北アルプス、遠方には煙を噴き上げる浅間山を望むことができました。山頂を記す石碑は割と新しそうでしたが、聞くところによると村の方達がよく整備するために登っているそうです。登山道もすごく奇麗にしてくれていて有難いですね。

下山ルートも看板がしっかり設置されていました。私たちが安心して登山ができるのも、地元の方達の努力のお陰ですね。登山道は凍っていましたので、気を緩めず慎重に下山しました。皆さんも是非、信州の隠れた名峰を楽しんでみてくださいね。