昨年、1年間を費やして自分のフリークライミングの限界にチャレンジしてきました。

クライミングにはルートの難しさによってグレードと呼ばれる難易度がつけられています。クライマーであれば、当然より難しいグレードを登りたいもの。その為に日々トレーニングをしたり、難易度の高いルートになってくれば何日も岩場に通うこともあります。

一方、僕は今まで1つのルートの為にトレーニングをしたり、何日も通ったりなどはしてきませんでした。簡単なルートでも純粋にクライミングを楽しみたかったし、同じルートをずっとやるよりも色々なルートを沢山登ってみたかったからです。しかし、あるルートに出会い、限界に挑戦することの素晴らしさや登れたときの感動の大きさを知りました。

そのルートは長野県の小川山という岩場にあります。ルート名は「NINJA」といい、ドイツのシュテファン・グロバッツという方が作ったルートです。グレードは5.14a。このグレードは僕にとって未知の領域であり、登れる自信は全くありませんでした。ですが、このルートを登ってみたいという好奇心からトライを始めました。


4月下旬、最初のトライをしました。結果は惨敗。分かってはいたことですが、圧倒的に実力が足りていませんでした。いつもならこれで辞めてしまうところですが、どうしてもこのルートを登りたかったので、それからも休みの日は毎回このルートに通いました。

「NINJA」の全景。30mの垂直な壁にボルトが5ピンしか打たれていない、非常に怖いルートなんです。

「NINJA」の核心は3ピン目から4ピン目の辺りで、僕もトライを始めてから2日目で核心までは到達しましたが、そこからが何日トライしてもなかなか出来ませんでした。


そうこうしている間に夏になってしまい、暑くてトライも出来なくなったので、トレーニングとして、夏の間はマルチピッチクライミングをしていました。この写真はお隣の瑞牆山というところにある「コスモス」というルートです。

あとは筋力を落とさない為にボルダリングも欠かさずやっていました。

夏が終わり、秋がやってきました。気温も下がりコンディションが良くなってきたので、「NINJA」のトライを再開しました。夏のトレーニングのお陰かちょっとずつ前進し、あと少しで登れそうな惜しいトライを何回もしていました。

そして、11月9日、秋晴れの最高のコンディションの日にその瞬間は訪れました。ウォーミングアップをし、早速「NINJA」をトライ、1トライ目でなんと核心を越え、登れた!っと思ったら足がスリップして落ちてしまいました。しかし、冷静に次はいける!と思い、時間を十分空けて2トライ目、今度も核心を越えることができ、先程落ちたところは気合いで通過、そのまま導かれる様に頂上へ。遂に「NINJA」を完登できました!!


頂上からの景色は見慣れているはずなのに、今までで一番美しく見えました。限界に挑戦し、諦めなかったからこそ、この景色を見ることが出来たんだなと思いました。今回はこの14というグレードを登るのに費やした日数は12日間、もっと時間をかければもっと難しいグレードもきっと登れるはずです。これからも諦めず頑張りたいと思います。