クライミングをしていると、世界のいろいろな山や岩場で登ってみたくなりますよね。クライミングのガイドブックが、かなりの数になってしまいましたが、見るたびにそのときの楽しかった思い出が鮮明に浮かんできます。

2019年の秋は、約10年前にアラスカ遠征を共にした友人とともに、アメリカのネバダ・ユタ州のトラッドエリアを中心とした20日ほどのクライミングトリップに出かけました。

旅の入口は、カジノで有名なラスベガス。もちろん空港にもじゃらじゃらが……。

その誘惑にも負けず(笑)、空港で合流した友人と共にレンタカーでザイオン国立公園へ。現地の情報収集と、「ザイオンの空気と雰囲気」を感じるべく、約4時間かけてのロングドライブです。10年間の積もる話やお互いの近況報告をしながらアメリカらしい広大な道をひたすら進みました。
ザイオン国立公園は、長い時間をかけて氷河が削り取った地形。もともとはこの山頂部の標高が平らな地面でした。写真では地面から山を見ているようですが、正確には谷底から地面を見上げている状態です。

目的地に到着し、早速翌日からクライミングを開始。僕たちが訪れるひと月前に巨大な岩崩れがあったようですが(写真中央)、大きな壁に囲まれた渓谷は美しく、登っていても常にわくわくしっぱなしでした。ただし11月とは思えない暑さのため、状態のいい日陰のルートを選びながら徐々に調子を整えていきました。
日本ではほぼ出会うことのない、人工登攀で山頂を目指すエイドクライマーが多かったことも印象に残っています。
ザイオンを後にして向かったのが、アーチーズ国立公園とインディアンクリークのベースとなるユタ州のモアブの街です。移動中、何やら怪しいガソリンスタンドに遭遇。なんともアメリカらしい雰囲気で、思わずシャッターを切ったのでした。

標高が2,000mを超える国道の峠を車で約5時間もかけて、ようやく目的地のアーチーズ国立公園に到着。


早速、アーチーズの中でも人気のあるキャッスルタワーのマルチピッチクライミングへ出発です。このときは、セカンドがリュックサックを背負ってクライミングするので、〈ultimate 22〉をチョイス。私がカムやヌンチャク・その他の荷物を〈ultimate gear 42〉に入れて、取付きまでアプローチしました。

人気ルートを選んだので、順番待ちに巻き込まれてしまいました。標高も高く、11月なので、動かなければ寒くなってきます。このときは、〈cozy PG hoodie〉を着ていたので、首筋を保温することで寒さから身を守っていました。これからの季節は、突然の寒さ対策や装備の軽減という点からも、フード付きのミッドレイヤーは、特におすすめです。

クラシックルートらしく、ハンド~ワイドクラック、そしてフェイスのムーブも必要となる内容の濃いルートでした。砂岩の感触を楽しみ、山頂からの眺望もとにかく広大で、砂漠の中でのクライミングを味わうことができます。

我々の前パーティーの若武者は、登り終えたピークから、懸垂でもなく、パラセーリングでもなく……ベースジャンプであっという間に下山していきました(驚愕)。これもアメリカらしいのか……着地は成功していましたので、ご安心を。
次回は、旅の後半としてインディアンクリークとレッドロックス国立公園をレポートします。