今回は、北海道の残雪期に楽しめるバリエーションルートをご紹介します。雪山では、積雪によって雪崩地形などができるため、必ずしも地図にある登山道ルートが安全とは限りません。また同じ山でも、難易度は天気や雪の状態、季節によって全く異なります。今回ご紹介する十勝連峰・上ホロカメットク山(1,920m)も、そんな山のひとつです。


地元登山者から「カミホロ」と呼ばれる上ホロカメットク山は、現在も噴煙を上げ続ける十勝岳(標高2,077m)を主峰とする十勝連峰をなす山のひとつで、標高は1,920m。北海道の中では標高の高い山ですが、登山口となる十勝岳温泉駐車場の標高が1,300m 弱なので、夏山の難易度でいうと初級者でも楽しめる山です。夏山シーズンは、6 月〜8 月頃。となりの富良野岳とあわせて日帰り縦走をしたりして、多くの登山者が訪れています。9月中旬には美しい紅葉が始まり、11月には初雪を迎え、本格的な冬山シーズンを迎えます。

写真中央左がカミホロカメットク山
展望が良く人気のある山ですが、11 月から3 月初旬頃までの気象条件は、ホワイトアウト・極低温・強風・多量な積雪など非常に厳しく、それゆえに正面壁にある冬期クライミングルートは、先鋭的アルパインクライマーにとっては魅力的なエリアのひとつとなっています。一般的には4 月の春の訪れと共に、このエリアを楽しめるベストシーズンがやってきます。

ここには正面壁・八ツ手岩・化物岩と、いくつかのエリアで冬期クライミングができます。はじめてこの地を訪れるなら、山頂に突き上げられる正面壁の北西稜ルートを登ってみてはいかがでしょうか。

このルートは、春の陽射しによって輝きを放つ迫力のある山々や正面壁を眺めながら、放射冷却で固くなった雪の上を2本のアイスバイルとアイゼンを効かせながら登っていきます。心地良い緊張感と引き締まった空気感がとても気に入っています。


頂上には自分が好きな尾根上のラインを登ることができ、眺望に恵まれれば周辺の地形を把握できるという点も、おすすめする理由のひとつ。私は岩稜や雪壁が交互に出てくるようなアクセントがある山のルートを登っていくことが好きなので、稜上をガイドすることが多いですが、スキーを担いで登ったりするときには、広い尾根の効率的なラインを登っていくパーティーも見受けられます。


4月に登るときのアウターは、カリマーの〈Alpinist JKT&Pants〉と決まっています。クライミング特有の動きに対する無駄のない裁断、必要数と考えられた配置のポケット、動きやすさを重視した素材を使ったアイテムなので、いつも同じような感覚で快適に登ることができます。アイゼンでのクライミングとなるので、下腿部分の細身なシルエットも気に入っています。

この地域は、今も噴煙が上がる活火山帯ということで、泉質の良い日帰り温泉が多くあります。登山口となる十勝岳温泉や、車で5分ほど移動したところにある吹上温泉、雪に囲まれた完全な露天風呂など、下山後も存分に楽しめます。富良野や旭川も近いので、観光にグルメ、ショッピングと、時間が足りない旅となるかもしれません。

カミホロでのガイド合宿風景。
今回ご紹介したのは一般登山ルートではないので、自分にはハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。そんなときは、私や日本山岳ガイド協会、地元の北海道山岳ガイド協会の山岳ガイド資格を持つガイドにご連絡ください。きっと、皆さんにとって思い出深い「旅」のお役に立てることだと思います。